2020 Fiscal Year Research-status Report
生体内抗体を活用したヒッチハイクがんワクチンの創製
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20K21480
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 靖雄 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授(常勤) (00392308)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ワクチン / 機能性ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、免疫の力でがんを治す、所謂、がん免疫療法の台頭も相俟って、ワクチンでがんの治療を試みるがんワクチンが注目されている。しかし、抗原とアジュバントを、リンパ節・樹状細胞へ適切に送達し得るキャリアの欠如から、未だ、普遍的な革新的がん治療法として確立されていない。本研究では、申請者が創製済みの「体内に普遍的かつ大量に存在する自然抗体に対して強固に結合可能なヒッチハイクペプチド」を用い、体内の抗体を送達キャリアとして活用することで、抗原の動態を最適化する“ヒッチハイクワクチン”とも言うべき新たながんワクチンの概念を構築する。 申請者は既に、マウスを用いた検討において、体内に存在する自然抗体に結合する約10種類のペプチドを取得している。2020年度には、まず、これらヒッチハイクペプチドの特性を評価した。C57BL6マウス由来自然抗体への結合性を比較したところ、約10種類のペプチドの中で、1種類のぺプチドが最も強く結合することが判明した。さらに本ヒッチハイクペプチドは、他の系統のマウスであるBALB/cマウス由来の自然抗体にも結合することが明らかとなった。そこで、インフルエンザウイルス由来ヘマグルチニン蛋白質(HA)に本ペプチドを融合した融合HAを作製し、マウスに皮下免疫した。その結果、融合HAワクチン群において、野生型HAワクチン群よりも強くHA特異的抗体が誘導されることが判明した。そこで、MHCクラス1エピトープペプチドに本ヒッチハイクペプチドを融合し、抗原特異的CD8 T細胞の誘導能を評価した。しかし、本ヒッチハイクペプチドによるCD8 T細胞の増強は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、研究実施者が登校できない期間が存在し、前半は研究の遅れが生じた。しかし現在は円滑に進んでおり、当初の予定通りの結果が得られたものと考えている。特に2020年度には、独自創製したヒッチハイクペプチドを用い、ヒッチハイクワクチンの概念を実証することができたと考えられる。一方で、抗原特異的CD8 T細胞の誘導には至っておらず、2021年度に改良を重ねたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、ヒッチハイクペプチドの免疫誘導メカニズムを精査すると共に、抗原特異的CD8 T細胞の効率的な誘導を目指す。特に、下記の事項を中心に実施する。 ・2020年度に、HAを用いて、抗原特異的抗体産生を増強し得ることを見出している。2021年度には、汎用性を評価する目的で、他の抗原を用いてヒッチハイクペプチドの有用性を評価する。特に、肺炎球菌由来抗原や、ウイルス様粒子を用いた検討を推進する。さらに、蛍光修飾されたヒッチハイクペプチドを投与後、所属リンパ節中の樹状細胞への移行性をフローサイトメータにより評価する。 ・現在のヒッチハイクペプチドでは、抗原特異的CD8 T細胞を効率的に誘導することができない。そこで、既に同定済みの、他のヒッチハイクペプチドを用いて、抗原特異的CD8 T細胞の誘導能を評価する。さらに現在、スクリーニング方法を改良したうえで、新たなヒッチハイクペプチドをスクリーニング中である。本スクリーニングにより、より優れたペプチドを取得できるものと考えており、これらペプチドを用いても検討する。
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