2020 Fiscal Year Research-status Report
Roles of sex chromosomes in pathophysiological sex difference formation in the heart
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20K21487
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
黒川 洵子 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40396982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 達也 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50390779)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 性差 / 心臓 / 血管 / 性決定遺伝子 / iPS細胞 / 2卵性双生児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、循環器領域における男女別の薬物療法戦略への貢献を目指し、性決定遺伝子Sryの複合型遺伝子改変マウスと男女iPS細胞を利用した統合的解析法を新たに構築して、心臓の性差形成における性染色体上遺伝子による調節機構を解明することを目的としている。 従来のように加齢モデルを用いるのではなく、発達初期に注目した独自のアプローチによって、循環器領域で初めて、性ホルモンに起因しない性差形成機構を切り分けることに挑戦する。 今年度は、胎児マウスをモデルとして冠血管の形態機能の性差を解析し、血管収縮にみられる性差についてカルシウムチャネルや平滑筋収縮の調節因子の関与を薬理学的に解析した。性差そのものだけでなく阻害剤に対する反応性にも性差があるが、心臓が小さい群では性差が明確ではなかったことから、性差が形成される初期過程をとらえられている可能性があると考察した。緊急事態宣言下では遺伝子改変マウスを繁殖することが難しかったが、年度後半にはSry改変マウスを用いて雌雄差を解析した。冠血管径については、遺伝子改変マウスの遺伝子型によって体格がかなり異なることが判明し、インクインジェクションは行って、画像データは得られたものの、最適な補正方法が見つかっていない。そこで、E17.5だけではなくE18.5でも解析することにより、心臓の長軸長で補正することが適正で有るかどうか検討することにした。2卵生双生児の健常男女からのiPS細胞樹立については学内倫理委員会の開催が延期になったこともあり、当初の予定よりも遅れが生じたが、年度末に承認されて実験できることになり、順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目1の性決定遺伝子を改変したマウスでの解析については、緊急事態宣言の影響により研究室での実験は一時的に停止したものの、これまで取得した画像データの解析に時間を充てることができた。実験をできない期間の詳細な解析の結果、マウスE17.5が冠血管の性差が形成され始めるタイミングではないかという新たな仮説を生み出すという成果に結びついた。研究項目2の男女双生児からのiPS細胞樹立の計画については、緊急事態宣言の影響を直接的に受けた。しかしながら、周囲の協力のおかげで、年度内に臨床実験を行うことができたので、世界の状況を考えれば善処したと思われる。 以上より、全体としては、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1については、胎生期マウスにおける冠血管の性差研究に関する論文を執筆することに必要なデータ(例数)を追加し、公表することを目指す。さらに、発生発達段階のことなるサンプルを取得し、マイクロアレイ解析などの網羅的解析により、性差形成のドライバー遺伝子の探索を行う。それとは別にiGONAD法による遺伝子導入実験については手技が安定しないので、研究室内の他のプロジェクトと共同で進めることにする。 研究項目2については、iPS細胞が樹立できるかを確認するために未分化性を免疫染色およびマーカー遺伝子の発現解析により検討する。その後、すぐさま心筋分化誘導を行い、細胞の特性が異なるかどうか、機能解析及び発現解析で調べていく。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大のせいで、学会がオンライン開催になったため、旅費を使用することがなかった。さらに、緊急事態宣言下にて、研究室に学生が入れなくなってしまったため、その間の細胞培養等の実験は総て留めたため、細胞維持費として計上していた予算を使用しなかった。
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Research Products
(32 results)