2020 Fiscal Year Research-status Report
胎盤エクソソームのウイルス型膜融合を介した妊婦薬物動態の統合制御
Project/Area Number |
20K21489
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
登美 斉俊 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (30334717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 源 日本医科大学, 医学部, 講師 (20287767)
野口 幸希 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (10803661)
西村 友宏 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (40453518)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎盤特異的に発現するSyncytinはウイルス由来の細胞膜融合能を持ち、合胞体化による胎盤関門の形成に関与している。胎盤から分泌されるエクソソームの膜にもSyncytinが発現しており、Syncytinを介したエクソソームの特異的細胞融合が薬物動態に与える影響について、受容体であるASCT2やMFSD2Aの発現機能と共に明らかにすることを目指している。絨毛癌由来で胎盤モデル細胞株として用いられるJEG-3細胞におけるSyncytin-2 mRNA発現は、protein kinase A活性化剤であるforskolinを添加することで約10倍に上昇した。そこで、Forskolin存在下あるいは非存在下で培養したJEG-3細胞からエクソソームを抽出し、ヒト肝細胞であるHepG2細胞へ添加した。その結果、HepG2細胞へのエクソソーム取り込み量は、forskolin存在下で培養した細胞由来のエクソソームにおいて高く、Syncytin-2がエクソソームの細胞膜への融合に関与している可能性が示された。また、JEG-3細胞由来エクソソームをHepG2細胞に添加することで、HepG2細胞内から胎盤特異的miRNAであるmiR-517a-3pの発現を検出することができた。よって、エクソソーム中のmiRNAがHepG2細胞内に導入されたことが示された。さらに、マウス胎盤におけるMFSD2Aの発現を解析し、胎盤を構成する3つの層のうち、胎盤関門を形成している迷路層において特に高い発現がタンパクおよびmRNAレベルで示された。これは、ヒト胎盤における発現パターンと同様であり、迷路層における発現と機能を今後明らかにすることは重要性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析から、Syncytin-2がエクソソームと細胞膜との融合に関与する可能性を示唆する結果を得ることができた。その上で現在、胎盤由来エクソソームと細胞との融合に関する、より直接的なメカニズム解明や影響解析に向けた実験系の構築、ノックアウトマウスの繁殖等を進めており、準備状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、誘導性のSyncytin-2発現細胞株の樹立を進め、この細胞株から精製したエクソソームを用いてSyncytin-2の関与を直接的に証明する予定である。また、胎盤モデル細胞から精製したエクソソームが肝細胞における薬物代謝酵素等の発現に与える影響についても、解析を進める。さらに、受容体であるMFSD2Aの機能解析を推進するため、ノックアウトマウスの譲渡を受け、繁殖を行っているところである。今後、動物レベルでの解析も進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも効率的な研究遂行を行ったこと、また、コロナ禍の中で学会出張等に伴う旅費の支出がなかったことから、今年度は当初計画より少額の使用額となった。次年度使用となった分の使用計画として、現在進めているノックアウトマウスの繁殖・維持費用やその発現解析に用いる抗体の作製や精製などへの支出を予定している。
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Research Products
(3 results)