2021 Fiscal Year Research-status Report
苦味受容体が起点となる有害物排除機構の発見と創薬への応用
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20K21493
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
中村 元直 岡山理科大学, 理学部, 教授 (40431762)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 苦味受容体 / GPCR / 皮膚細胞 / ガン細胞 / 異物排泄 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、様々なガン細胞株での苦味受容体の発現を確認したが、今年度はこの内の乳ガン細胞株MCF-7を用いて解析を進めた。この細胞株を高濃度(500μM)のデナトニウム存在下で長期培養すると排泄タンパク質であるABC-B1の発現が増強することを以前に確認しているが、この細胞が臨床で広範囲に使用される抗ガン剤であるドキソルビシン(50 nM濃度)に対して耐性になることを明らかにした(親株MCF-7では死滅する濃度)。同様の現象が他の苦味物質(例えばジフェンヒドラミン等)曝露株でも認められるか否かを現在検討中である。我々が考える作業仮説は以下である。細胞内には常に25種類の苦味受容体が侵入物質を感受できるようにスタンバイ状態にあり、こららが細胞内に侵入した苦味物質(異物)を感受すると、G12/13型Gタンパク質を活性化し、NFk-Bの活性化を介してABC-B1の発現を増強する(昨年度報告済み)。この増強発現したABC-B1が細胞内に侵入した異物(苦味物質)を細胞外に積極的に排出するという考えである。G12/13型Gタンパク質の活性化からNFk-Bの活性化に至るシグナル経路は未解明であるが、同時進行中である皮膚系細胞株HaCaTを用いた解析より、苦味物質刺激で苦味受容体を活性化するとMAPキナーゼファミリーのうち、JNKが活性化される結果を得た。現在、この結果の再現性を検討中である。なお、これらの新しい知見は、2報の日本語レビュー、および、国内での学会(日本生化学会)で既に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガン細胞株と皮膚系細胞株の両方を活用し、苦味物質曝露細胞株の抗ガン剤耐性能獲得や苦味受容体活性化後のシグナル伝達経路の解明といった新しい知見を得ることができた。コロナ禍で研究制限が長期間あった中、効率よく、計画的に研究を遂行できたと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最終年度である。ガン細胞株での抗ガン剤耐性への苦味受容体の関与(重要性)、および、皮膚系細胞での苦味受容体を介するシグナル伝達機構の解明の2点に絞り、仕事をまとめる(論文発表、学会発表)ガン細胞株と皮膚系細胞株で基本的に苦味受容体は異物排泄という共通の生理機能を担うが、皮膚では炎症を回避するために重要な役割を担う一方、ガン細胞では抗ガン剤耐性という厄介な問題の原因になることを明らかにする。これらは皮膚保護剤の開発や抗ガン剤耐性回避薬の開発に大きなヒントを提供できると考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で研究活動の大幅な制限が発生し、当初計画よりも支出額が低くなった。最終年度である2022年度は論文発表費用(英文校正費用、論文掲載費用)が多くなることが予想され、これに使用する予定である。
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Research Products
(10 results)