2020 Fiscal Year Research-status Report
Origins of senescent cells that regulate aging in vivo
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20K21497
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 真 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40217774)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞老化 / p16 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
個体で同定・単離可能なp16CreERT2-tdTomatoマウスを樹立し、このマウスの肝臓および腎臓からtdTomaoto陽性細胞をFACSで単離したのちに、1細胞トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、ほぼすべての細胞種においてp16陽性細胞が検出された。肝臓においては、特に肝類洞内皮細胞(LSECs)において多く認められた。一方、クッパー細胞ではp16陽性細胞が多く存在する細胞集団はクッパー細胞とLSECsの両者の性質を持っていることが明らかになった。これは、p16陽性になることにより細胞のアイデンティティが変化していることが推察される。また、コリン欠乏高脂肪食を用いた長期間飼育により非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を誘導した肝臓において、p16陽性細胞と陰性細胞の遺伝子発現変化の違いを解析したところ、免疫細胞であるクッパー細胞やマクロファージにおいて、ストレス性転写制御因子AP-1や炎症性サイトカイン制御因子であるNF-kappaB経路の遺伝子の発現上昇が認められた。腎臓においてp16陽性細胞は近位尿細管上皮細胞と遠位尿細管細胞に多く認められた。特に、近位尿細管上皮細胞においては、p16陽性細胞において個体老化との関連も指摘されているmTOR経路の遺伝子群やERストレス関連遺伝子の発現上昇が認められることが明らかになった。一方、p16陽性の遠位尿細管上皮細胞においては、SASPや腎障害に関わる遺伝子の発現変化が大きく変化していた。これらの結果から、生体内の老化細胞は多様な細胞から誘導され、細胞種ごとに様々な機能変化・性質が認められることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p16CreERT2-tdTomatoマウスの樹立や個体内のp16陽性老化細胞の動態、さらにシングルセルトランスクリプトミクス解析結果は、2020年9月にCell Metabolism誌に掲載された。また様々な臓器からシングルセルの調整、さらには解析技術を確立し、現在脳、肺、脂肪組織、皮膚組織などのシングルセル解析を順調に進めている。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、脳、膵臓や皮膚、脂肪組織のp16陽性細胞のシングルセル解析を行い、それぞれの臓器・組織におけるp16陽性老化細胞の加齢性変化における役割を明らかにしていく。とりわけ、脳組織においては視床や視床下部、さらには線条体などの部位特異的なp16陽性細胞の性質に着目した解析を実施する。またこれらの細胞を特異的に除去できるマウスモデルも作成したため、p16陽性老化細胞除去後の多様な臓器・組織の機能改善効果についても解析を加える予定である。
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Research Products
(13 results)