2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21501
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00596174)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 上皮 / 概日時計 / がん / シグナル伝達 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はショウジョウバエをモデルとして、上皮の概日時計によるがん制御メカニズムを遺伝学的解析により明らかにするものである。ショウジョウバエ上皮である複眼原基にがん遺伝子Srcを活性化する細胞集団を野生型細胞とモザイク状に誘導すると、Src活性化細胞集団は増殖するどころかむしろ細胞死を引き起こして組織から排除されることをこれまでに見いだしている。そこでショウジョウバエの2番染色体左腕に存在する遺伝子を標的としたCRISPR/Cas9ライブラリー系統を用いてSrc活性化細胞内に突然変異を導入しSrc活性化細胞集団の腫瘍形成を促す変異体を探索するスクリーニングした。約3,000系統をスクリーニングし、ショウジョウバエ概日時計因子であるtimeless (tim) の突然変異がSrc活性化細胞集団に挿入されると、Src活性化細胞集団は過剰に増殖し腫瘍を形成することを見いだした。そこで、概日時計がどのようにがん遺伝子Srcを活性化する細胞集団の腫瘍形成を抑制しているのか、概日時計によるがん抑制機構に関わる因子の探索を実施した。 前年度までの解析によりtim変異がSrc活性化細胞集団の腫瘍形成を促していたことから、当該年度は他の主要な時計遺伝子群とSrc活性化細胞集団の腫瘍形成の関係性を遺伝学的手法により解析した。その結果、tim以外の概日時計のコアとなる因子群(Period, Clock)の遺伝子発現をRNAiによりサイレンシングした時でもSrc活性化細胞集団の腫瘍形成が引き起こされることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
tim以外の概日時計のコア因子とSrc活性化細胞の増殖の関係性を明らかにできたため、研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの解析からtim変異によるSrc活性化細胞集団の腫瘍形成がAktに依存している可能性があるため、他の時計因子についても同様の分子メカニズムにより腫瘍形成が引き起こされるか解析する。またSrc以外のがん遺伝子が駆動する腫瘍形成についても解析していく。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であったショウジョウバエ系統や試薬等の一部が所属研究室内の他のグループとシェアすることが可能になったことや、他の研究機関から分与してもらえたため、当初予定していた使用額に比べて少額に抑えられた。次年度以降に実施予定である分子メカニズム解析には、さらに多数のショウジョウバエ系統が必要なことや細胞内で変化する分子活性や細胞挙動を解析するための抗体等の試薬類の購入が必須となり、これらの消耗品費として翌年度分と合わせて使用する予定である。
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