2021 Fiscal Year Research-status Report
小型魚類モデルを用いた変異モザイク疾患の発症機序の解明
Project/Area Number |
20K21502
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石谷 太 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (40448428)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
Keywords | モザイク疾患 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のNGS解析により、ヒト胚では発生初期からランダムな遺伝子変異が頻繁に起きており、その結果として、一見正常そうに見えるヒト成体も変異モザイクであることが明らかになりつつある。また、当然ではあるが、胚発生時の変異により生じるモザイクは、多くの先天性疾患に関わる。しかしながら、変異モザイク に注目した疾患モデル動物は報告例がほとんどなく、これに関連し、発生期に生じた変異がどのようなプロセスを経て疾患を引き起こすのかは不明である。一方で、動物胚が突発的に生じた不良な細胞を積極的に除去するシステムを持つことが明らかになりつつあるが、このようなシステムがあるにも関わらず、どうしてモザイクが生じてしまうのかは不明である。そこで、本研究では、モザイク疾患モデルゼブラフィッシュを作製・解析することでモザイク疾患と不良細胞除去機構の関係と、モザイク疾患の発症プロセスを分子・細胞・個体レベルで解明する。 本年度は、ゼブラフィッシュに多様な変異細胞・不良細胞を導入し、その動態を可視化解析する系を構築し、この系を用いた解析によって、ゼブラフィッシュ稚魚上皮に出現したがん原性細胞(前がん細胞)が隣接細胞に感知されて細胞老化を誘導されて増殖活性を抑制され、最終的に体外に物理的に押し出されることを発見した。また、p53変異を持つ上皮やDNAダメージが蓄積した上皮では、前がん細胞は排除されずに生存し、隣接正常細胞に増殖あるいは二次的な細胞老化を誘導して初期の腫瘍を誘導することを発見した(Haraoka et al., Nat Commun 2022)。このように、発生期に生じた不良細胞を隣接細胞が感知・排除する新たなメカニズムを明らかにし、さらに、追加変異や環境因子がこの排除機構を抑制し、疾患発症を駆動することを明らかにした。本研究成果は、ヒト疾患発症プロセスの新たな理解をもたらすものと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物個体が備える新たな不良細胞感知・排除機構を発見し、さらに、それを破綻させ、疾患発症を誘導する因子を明らかにすることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒト疾患と関わる多様な変異細胞・不良細胞をゼブラフィッシュに導入し、その生存・増殖の動態、さらにはその動態に影響を及ぼす環境因子・遺伝的因子を探っていく。これにより、発生を支え、疾患発症を防ぐ新たな生体防御機構を解明し、ヒト疾患発症機構の新たな理解を切り拓く。
|
Causes of Carryover |
COVID19の影響で旅費を使用しなかったこと、研究に参加した学生の頑張りで人件費を削減できたこと、
|
Research Products
(16 results)