2021 Fiscal Year Research-status Report
脳内環境を守るクモ膜バリアの分子基盤と生理的意義の解明に向けた萌芽的研究
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20K21509
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
古瀬 幹夫 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 教授 (90281089)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | クモ膜 / タイトジャンクション |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光免疫染色により、クモ膜にクローディン-11とアンギュリン-3(ILDR2)のシグナルを認めた。そこで、クローディン-11欠失マウスでクモ膜のタイトジャンクションに変化が見られるか、超薄切片法による電子顕微鏡観察で確認を進めている。また、免疫電子顕微鏡法でクローディン-11の局在を観察するために、化学固定試料で実績があるとされる市販抗体を購入して調べたところ、硬膜と思われる領域に標識が見られることがわかり、この抗体の使用は放棄した。一方、化学固定に弱い手持ちのクローディン-11抗体について検討を重ねた結果、賦活化処理により、光学顕微鏡レベルでは免疫染色が復活することを確認した。この賦活化処理が、電子顕微鏡観察レベルで十分な形態を保持しているか確認する必要がある。手持ちのアンギュリン-3抗体は同様の賦活化を施しても免疫標識が復活せず、今後、最近発売された市販のアンギュリン-3抗体を入手して使用に耐えるか試す予定である。トレーサーの血管灌流による硬膜からのバリアアッセイは、クーマジーブリリアントブルー,ビオチン化試薬等を試しているが、いまだよい条件が見つからず、検討中である。クモ膜細胞の形態の解析では、連続断面走査顕微鏡観察用の試料として、脳表層の垂直な試料と水平な試料を準備し、連続断面の一通りの撮像を終えた。今後、セグメンテーションを行い、クモ膜細胞の形態の立体再構築を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度からの遅れを引き継いでいる。また、トレーサーの血管灌流による硬膜からのバリアアッセイの条件検討が当初の期待より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年の延長が認められたことにより、プロジェクトは完遂できると考えている。クモ膜細胞の形態解析については、すでにSBF-SEMによる撮像が終了しているので、2022年度にセグメンテーションを行う。蛍光免疫染色でクモ膜に発現することを確認したクローディン11、アンギュリン3について、免疫電子顕微鏡による局在確認を2022年度に実施しながら、両遺伝子をそれぞれ欠失するマウスのクモ膜の純形態の電子顕微鏡解析を実施する。トリセルラータイトジャンクションに関しては、クモ膜においてアンギュリン3とアンギュリン1が関与すると予想されたため、アンギュリン3欠失の背景でアンギュリン1をクモ膜特異的に欠失させるマウスを作出中であり、2022年度中に形態学的解析を実施する。
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Causes of Carryover |
全体の計画に遅延があり、当初2年であった研究期間を1年延長したことに伴い、研究費の次年度使用額が発生している。2022年度に、マウス飼育費、免疫電子顕微鏡観察に必要な抗体を含む電子顕微鏡観察用の試薬や器具、クモ膜バリアを形態学的に検出する試薬の購入と研究発表のための旅費に使用する予定である。
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