2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on the molecular basis that defines organ regenerative ability in an anuran amphibian (Xenopus laevis)
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20K21517
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 健雄 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10201469)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | アフリカツメガエル / 器官再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカツメガエル幼生は発生初期には高い後肢芽の再生能をもち、肢芽切断後、完全な後肢を再生する。しかし、発生の進行に伴い再生能は失われ、発生後期では肢芽切断後、再生指の数が減ったり、指や関節のない軟骨性のスパイクしか形成されない。これまでに、発生後期の切断後肢芽に線維芽細胞増殖因子10(FGF10)を投与すると再生能が改善することが報告されている。今年度は、発生の進行に伴い後肢芽の再生能が低下する原因を探るため、発生後期の切断肢芽にFGF10を投与し、FGF投与群と無処理群の後肢芽の単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)を行い、遺伝子発現プロファイルが異なる細胞クラスターを探索した。昨年度までにFGF10投与は、既報の再生芽上皮(Apical epidermal cap; AEC)に加えて、特定の白血球分画や、線維芽細胞様細胞分画の発現遺伝子プロファイルに顕著な影響を与えることを見出している。今年度は、FGF10投与群の後肢芽は無処理群に比べ、より近位(proximal)な部位に対応する遺伝子発現プロファイルを示すこと、増殖状態にある筋衛星細胞の頻度が増加していることを見出し、これらの細胞の遺伝子発現プロファイルの変化が再生能改善に寄与することを示唆した〔Yanagi, Kato et al., Dev. Growth Differ. (2022)〕。さらに、ツメガエル幼生尾の組織幹細胞の性質を調べる目的で、哺乳類の組織幹細胞濃縮法〔Side population(SP)法〕をツメガエル幼生尾の再生芽に適用し、組織幹細胞の濃縮に利用できることを示した〔Kato et al., Dev. Growth Differ. (2022)〕。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
scRNA-seqは「先進ゲノム支援(PAGS)」によるご支援をいただいて実施した。昨年度までに、FGF10投与時の肢芽再生能向上に関わる細胞種を同定するため、FGF10投与により遺伝子発現プロファイルが大きく影響を受ける細胞種をscRNA-seqにより探索し、AECや軟骨芽細胞、白血球の一部分画、線維芽細胞様細胞を同定していた。今年度はさらに解析を進め、FGF10処理群の後肢再生芽において四肢発生時の近位マーカーshort stature homeobox 2(Sox2).Lの発現が亢進すること、細胞周期関連遺伝子の解析により、FGF10処理群の筋衛星細胞においてFGF10処理群でS/G2/M期にある細胞の頻度が増加していることを見出し、これらの細胞の遺伝子発現プロファイル変化が、FGF10処理による再生能向上に関係する可能性を示唆した〔Yanagi, Kato et al., Dev. Growth Differ. (2022)〕。一方、SP法は組織幹細胞の薬剤排出能が低いことに基づく幹細胞濃縮法であり、薬剤排出を担うABCトランスポーターの阻害剤であるverapamilを投与した際に排出能の低下する細胞集団をSP分画として分取する。昨年度までに、ツメガエル幼生尾再生芽にSP法を適応し、核酸染色試薬による染色性が低下する2種類のSP分画(SP1とSP2)を検出していた。今年度は、SP1とSP2分画のRNAシーケンス解析により、両者とも筋衛星細胞マーカーpax7発現細胞を含むこと、一方でSP1は赤血球を多く含むことを見出した。幹細胞の濃縮分画としてはSP2分画がより有用と考えられる〔Kato et al., Dev. Growth Differ. (2022)〕。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究課題の最終年度であり、これまでに関連する研究成果を2報の学術論文として出版している。一方、本研究課題に関連する研究課題としては、この他に、ツメガエル幼生尾再生に必須な役割を担い、特定の白血球分画に発現する新規遺伝子regeneration factors expressed in myeloid (rfem)を同定しており、今年度はrfem発現白血球が尾再生に必須であり、rfemはこの白血球の尾再生促進に必要であることを示した。以上の研究成果は現在Development誌に論文投稿し、リバイス中(Deguchi et al.)となっている。来年度はこのリバイス実験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
上記の通り、関連する研究課題について1報、論文投稿し、現在、リバイス中となっている。このリバイス実験に必要な消耗品費と論文掲載費分を次年度に繰越している。
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Research Products
(5 results)