2020 Fiscal Year Research-status Report
Dissecting molecular mechanism of diapause egg formation in dengue vector mosquito
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20K21532
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高柳 咲乃 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10794266)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 蚊 / 越冬 / ヤブカ / 温帯 / 熱帯 / デングウイルス / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)は、デング熱等の感染症を媒介するヤブカの一種である。ヒトスジシマカは、卵の状態で越冬する。越冬卵形成は、晩秋の低温・短日を環境シグナルとして誘導される。越冬卵の内部では一齢幼虫まで発生が進行するが、そこで一旦発育を停止し、初夏になって初めて孵化する。越冬卵形成能力は、温帯地域に棲むヒトスジシマカだけが有する形質であり、東南アジアでは同種であっても有していない。 日本で採集されたヒトスジシマカ系統(温帯由来)とマレーシアのヒトスジシマカ系統(熱帯由来)の越冬卵形成能を比較した。越冬条件下(気温21℃・明期8時間)で飼育後に産卵させ、その孵化率を調べた結果、マレーシア系統の卵は82%が孵化したが、日本系統の卵では1%未満であり、ほぼ全てが越冬卵として形成されたことが確認された。このことから、前者は熱帯系統、後者は温帯系統であることが示された。 熱帯系統と温帯系統を用いて、RNA-seqにより網羅的に遺伝子発現変化を比較した。胚発生完了後に、温帯系統の越冬卵と比べて熱帯系統の非越冬卵において著しく発現量が上昇していた遺伝子を同定することに成功した。その一部は昆虫ホルモンを含んでおり、孵化行動を制御している可能性が示唆された。CRISPR/Cas9システムにより、ヒトスジシマカの温帯・熱帯両系統を用いて、越冬に関与する可能性のある遺伝子のノックアウト系統を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蚊やマダニなどの病原体媒介節足動物において、越冬は子孫を残し集団を維持するための必要不可欠なプロセスである。当該年度の研究により、ヒトスジシマカの越冬メカニズムを解明するための基盤が確立された。特に、越冬卵形成時に機能する候補遺伝子群の存在が明らかになった。それらの遺伝子を欠損するヒトスジシマカ系統の作出がなされており、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトスジシマカ越冬卵の特徴は、(1)親個体が日長・気温をシグナルとして認識することによって越冬卵を形成し、(2)越冬卵内の幼虫は孵化せずに冬の低温・乾燥・飢餓に耐え、(3)次の初夏になると気温・日長の変化などによって孵化が促進されるという3つに分けられる。これらに対応して、越冬卵形成の誘導メカニズム、越冬卵の強固な環境ストレス耐性、越冬卵の孵化行動の誘導、越冬卵形成能力の進化プロセスの各々について、研究計画通りに推進する。
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Causes of Carryover |
(理由)ヒトスジシマカにおける遺伝子改変およびゲノム編集(CRISPR/Cas9)の技術開発が予想以上に進展し、それを主に据える研究計画細目を重点的に実施した。その結果、研究計画の実施順序を一部変更し、物品費(消耗品)および人件費の大部分を使用する他の研究計画細目を次年度以降に実施することにしたため。
(使用計画)物品費(消耗品)および人件費を活用し、越冬卵形成の誘導メカニズム、越冬卵の強固な環境ストレス耐性、越冬卵の孵化行動の誘導、越冬卵形成能力の進化プロセスについて、解析を実施する。
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Research Products
(1 results)