2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚マダニ感染における2型自然リンパ球のエピジェネティックメモリー
Project/Area Number |
20K21534
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 哲郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (60624236)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 自然リンパ球 / ILC2 / フタトゲチマダニ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では皮膚外部寄生虫感染とアトピー性皮膚炎がともに2型免疫反応を主体とし、その臨床的、免疫学的類似点が古くから知られていることに着目し、皮膚外部寄生虫感染の解析を通してアトピー性皮膚炎の病態を明らかにすることを目的とした。本年度は皮膚外部寄生虫としてフタトゲチマダニを用いマウス皮膚感染モデルの確立を行った。 1.フタトゲチマダニの幼ダニをマウスの皮膚に感染させ免疫反応を観察した。HE染色による観察では1次寄生の際には軽度の細胞浸潤が見られた一方で、2次寄生の際には顕著な細胞浸潤が真皮に認めたれた。浸潤している細胞の種類を蛍光染色によって観察したところ、MHCll陽性の骨髄球系の細胞とThy1.2陽性のリンパ球系の細胞の顕著な浸潤を認めた。またK14陽性の表皮ケラチノサイトが増殖する表皮肥厚が起きていた、このことからマダニの1次寄生の際に免疫記憶が形成され、2次寄生の際にはより強い免疫応答が起きたことが考えられた。 2.さらに免疫細胞の詳細な観察を行うため、フタトゲチマダニ寄生皮膚から細胞調製を行い、フローサイトメトリーを用いて解析を行った。その結果、免疫組織染色と一致し、2次寄生後の皮膚ではThy1.2陽性のリンパ球系の細胞が顕著に増えていた。Thy1.2陽性細胞の中ではCD3陽性のT細胞とCD3陰性の自然リンパ球の両方が増加していた。また、骨髄球系の細胞の中ではCD200R3陽性C-kit陰性の好塩基球が著明に増加していた一方で、CD200R3陽性C-kit陽性の肥満細胞の増加は認められなかった。好塩基球や肥満細胞はいずれもアレルギー病態に関わる細胞であるが、好塩基球だけ増えるという選択性は興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.安定的なマダニ寄生のモデルの確立に時間を要し、計画通りの免疫学的解析が十分に行えなかった。マダニ寄生の手法には改善の余地があると考えられた。免疫染色に関してはThy1.2抗体の染色の強度が予想より強くなく、感度をあげることでリンパ球系の細胞の検出を高める必要性がある。 2.フローサイトメトリー解析に認められた好塩基球の増加と一致する組織学的な所見を得る必要がある。好塩基球染色に用いられるMcpt8は凍結切片組織では良好な染色が得られなかったことからホルマリン固定パラフィン切片で検討を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.2次寄生によって起こる顕著な免疫応答が何によってもたらされるのか明らかにする必要がある。マダニ寄生では上皮バリア破壊が起きることを考え、上皮から産生されILC2活性化の重要因子として知られるIL-33やTSLPの欠損マウスにマダニ寄生を行い、2次寄生の際に起こる炎症が低減されるか検討する。 2. また免疫記憶の機序を明らかにする必要がある。まず獲得免疫系T細胞が必要かについてRag2KOを用いて検討する。これまでの研究からマダニ寄生の免疫記憶には抗体が関与していないことが示唆されている。組織常在性の細胞が関与している可能性を疑い、エピゲノム解析を行うために1次寄生後の組織から細胞を採取しATAC-seqを行う。
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Causes of Carryover |
安定したフタトゲチマダニ寄生モデルの確立に時間を要したため、当初計画していたエピゲノム解析を行えなかった。次年度は確立したモデルを用いたATAC-seq解析を行う。
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