2020 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍に対する中枢性免疫寛容の成立とその抗腫瘍免疫応答に与える影響
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20K21537
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木村 元子 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (00345018)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 中枢性免疫寛容 / 抗腫瘍免疫 / 胸腺 / がん抗原 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
元来ヒトの生体内に構築されている免疫システムは、がん細胞を攻撃し駆逐する能力を有する。しかし、自己の免疫システムが何らかの原因により活性化できない状態、すなわち「がんに対する免疫寛容状態」に陥ってしまうことが大きな問題である。がんに対する免疫寛容を誘導するメカニズムとして、がん微小環境内における「エフェクターT細胞の疲弊誘導」「制御性T細胞による免疫抑制」等が挙げられる。一方で、がんに対する免疫応答を考える際には、腫瘍局所だけではなく、全身における免疫応答を考慮する必要がある。しかし、がんに対する免疫寛容において、中枢性免疫寛容の影響を解析した研究報告はほとんどない。そこで本研究は、中枢性免疫寛容成立の場である「胸腺」に着目し、「がんに対する中枢性免疫寛容」が抗腫瘍免疫応答に及ぼす影響を解析することを目的として研究を進めている。 令和2年度は、がん抗原に対する先天的中枢性免疫寛容が、抗腫瘍免疫応答に及ぼす影響について解析を行なった。つづいて、がん抗原に対する後天的中枢性免疫寛容成立の可能性と、その成立が抗腫瘍免疫応答に及ぼす影響について解析を行うための解析システムのセットアップを行なった。具体的には、フローサイトメトリーを用いた胸腺内樹状細胞の検出と回収方法の確立を行い、胸腺内樹状細胞による腫瘍抗原提示能について解析した。また腫瘍特異的なT細胞の検出を行うために、OVAを発現する腫瘍株の作製と、OVA特異的なT細胞の検出システムのセットアップを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん抗原に対する先天的中枢性免疫寛容が、抗腫瘍免疫応答に及ぼす影響についての解析は、当初の予定通り順調に研究が進行した。 がん抗原に対する後天的中枢性免疫寛容成立の可能性と、その成立が抗腫瘍免疫応答に及ぼす影響について解析を行うために、当初は「胎児胸腺腎皮膜下移植の実験系」の利用を予定していたが、移植による炎症誘発などにより抗腫瘍免疫応答への影響が懸念されたために異なる実験系で解析を進めることとした。第一に、フローサイトメトリーを用いた胸腺内樹状細胞の検出と、マイクロビーズを用いた回収法を確立し、回収した胸腺内樹状細胞を用いてその腫瘍抗原提示能について解析した。さらに腫瘍特異的なT細胞の検出を行うための実験系をセットアップした。具体的には、OVAを発現する腫瘍株を複数作製した。またOVA特異的なヘルパーT細胞の検出システムのセットアップを行なった。これらの実験系を用いて、腫瘍抗原が胸腺内樹状細胞により未熟胸腺細胞へ提示される可能性、それによるT細胞分化への影響や抗腫瘍免疫応答に与える影響について詳細を解析できる準備が整った。当初の計画とは異なる実験系を一部使用することにしたが、その実験系のセットアップは順調に進展しており、研究目的を完遂するために着実に進行している。 以上のことより、研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
がんに対する免疫寛容を誘導するメカニズムの一つとして「後天的中枢性免疫寛容」があげられる。この後天的中枢性免疫寛容が腫瘍抗原に対して成立する可能性と、その成立が抗腫瘍免疫応答に及ぼす影響について解析を進めていく。令和2年度までにセットアップした実験系を用いて、中枢性免疫応答成立の場である「胸腺」における、腫瘍特異的な制御性T細胞の分化と、その腫瘍免疫応答に及ぼす影響について解析を行う予定である。OVAを発現する腫瘍株は二種類入手・作製済みであり、腫瘍特異的なT細胞を検出するシステムも構築済みである。また腫瘍抗原を胸腺へ運ぶ担い手の同定を行う。 一方、近年、末梢の制御性T細胞が胸腺内へ戻り胸腺分化に影響を与えている可能性があることが報告された。本研究では、がん抗原特異的制御性T細胞が末梢から胸腺へ戻って何らかの機能を発揮している可能性についても解析を進める。 以上の研究を通して、腫瘍抗原による宿主免疫システムへの免疫寛容成立機構の解明を目指した研究を行なっていく。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] CD69 Biology and Pathology2020
Author(s)
Kimura M.Y., Koyama-Nasu, R., Mita Y., Hayashizaki, K. and Nakayama T.
Organizer
11th International Symposium of IFReC, Immunology at the Forefront
Int'l Joint Research / Invited
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