2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21538
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 峰夫 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80312320)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 前白血病状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病の発症過程においては、複数の遺伝子変異が造血幹細胞や造血前駆細胞に蓄積し、前白血病状態を経てから急性骨髄白血病になることが知られている。しかしながら前白血病状態と白血病状態を区別する機構は未だ明らかでは無く、従って前白血病状態から白血病発症に至る鍵となる機構についても同定されていない。本研究課題では、前白血病状態から白血病への進展を再現するモデルマウスを用いて、経時的に骨髄細胞の解析を行うことで、前白血病状態から白血病に至るプロセスを同定し、白血病の初期における新規治療の確立を行う。臨床的に前白血病状態および白血病に反復的に出現するDNMT3A、ASXL1、RUNX1の変異に対応するDnmt3a変異ノックインマウス、Asxl1変異ノックインマウス、Runx1ノックアウトマウスはそれぞれ前白血病状態を生じることを明らかにした。また、これらともう一つの変異がん遺伝子(Asxl1変異x Idh1変異、Dnmt3a変異x Nras変異)の強制発現を組み合わせたマウスは白血病を発症し、本研究に用いるモデル系として適切であることを明らかにした。また、マウス同系移植モデルを用いて、新たに同定した急性骨髄性白血病の予後不良因子であるHMGA1高発現がマウスモデルにおいて前白血病状態を呈することを見出した。今後、これらのプラットフォームを用いて、前白血病状態から白血病発症への移行の詳細な機序について解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前白血病状態を再現するDNMT3A変異マウス、ASXL1変異マウス、RUNX1ノックアウトマウスに加えて、急性骨髄性白血病患者のRNA-seq解析から同定したHMGA1高発現を同系移植で再現したモデルマウスも前白血病状態を呈することを見出した。また、Dnmt3a変異マウスの造血幹細胞分画に変異Nrasを高発現させ同系移植を行う系およびAsxl1変異マウスの造血幹細胞分画に変異IDH1を高発現させ同系移植を行う系において、それぞれ白血病への進展が認められた。これらの前白血病-白血病発症モデルマウスを用いて、経時的に白血病発症に至る遺伝子変異、mRNA発現量変化を解析し、白血病発症の端緒となる鍵事象の同定を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前白血病状態から白血病発症に至る機構について、Dnmt3a変異ノックイン×Nras変異過剰発現モデルマウス、Asxl1変異ノックイン×Idh1変異過剰発現モデルのそれぞれを用いて経時的な骨髄造血幹細胞・前駆細胞レベルでの遺伝子変異解析、単一細胞レベルでのmRNA発現量変動解析を行い、白血病発症に重要な遺伝子群を同定する。候補となる遺伝子群に対してカスタムsgRNAライブラリ作成し、前白血病-白血病発症マウスモデルにおいて作用させることで、白血病発症となる鍵機構を同定する。さらに、同定した遺伝子、メカニズムについて適切なin vitroの系を用いて機能解析を行い、白血病発症機構を標的とする新規治療開発の基盤とする。
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Research Products
(8 results)