2021 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞社会の構築と流動化を駆動する分子基盤の解明
Project/Area Number |
20K21544
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅田 浩司 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (60508597)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 腫瘍悪性化 / 遺伝学 / 複眼原基 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの複眼原基にapico-basal極性を制御する遺伝子である scribble (scrib) の null 変異を有する細胞クローンを誘導すると細胞競合によって排除される。しかし、scrib 変異細胞内でがん遺伝子 Ras の活性化 (RasV12) を誘導すると細胞(Ras/scrib細胞)は排除に抵抗性を示すようになり、逆に過剰な増殖を伴って浸潤・転移する悪性腫瘍を形成する。すなわち本モデルはがんの悪性化を駆動する分子機構を生体レベルで解析できる優れたモデルである。本年度の研究では、腫瘍内では非対称分裂のマーカー分子を発現するする細胞が数百個程度、神経幹細胞から生み出される神経前駆細胞の形質獲得に不可欠な分子を発現する細胞が50個程度、いずれも全個体のクローン内で時間経過とともに出現することを見出した。また、前者は腫瘍細胞が浸潤しつつある腫瘍辺縁部に局在していた。この領域ではJNKシグナル依存的な腫瘍悪性化を認めるため、これらの細胞はJNKシグナルに依存的な分子機構によって腫瘍悪性化を制御している可能性があると考えられる。また、これまで Ras/scrib 細胞は細胞競合における「勝者」として周囲の細胞を駆逐しながら過剰増殖し、浸潤・転移すると考えられてきた。そこで本年度は腫瘍悪性化を制御する細胞競合の分子機構にも着目して解析を進めた。まずRas/scrib クローンの誘導条件を検討することで、野生型細胞との境界上で明確に細胞死が観察できる条件を見出した。この系を用いて解析を行った結果、これまでに予期しなかった新たな知見を得た。また、この現象を制御する複数の分子の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書の内容に従って研究が推移しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き計画に従って実験を進める。また、腫瘍悪性化を制御する細胞競合の分子メカニズムについても解析を進める。
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Causes of Carryover |
腫瘍悪性化を制御する細胞競合の分子機構に関して予期せぬ知見を得た結果、一部の研究計画を変更したため。繰り越した研究費はこの知見を解析するために適切に使用する。
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Research Products
(1 results)