2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of paradoxical growth suppression by over activation of oncogene kinases
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20K21554
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
片山 量平 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 部長 (60435542)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ドライバーがん遺伝子 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでに申請者らが見出してきた過剰すぎるDriver Oncogeneシグナル(ROS1やALK融合遺伝子陽性がんにおいてしばしば分子標的薬耐性獲得の際に認められるキナーゼ活性の亢進を起こす耐性変異)が引き起こすがん細胞のパラドキシカルな増殖抑制と細胞死誘導の詳細なメカニズムを明らかにするとともに、この現象を逆手に取った新規治療法を探索する。即ち、キナーゼ型Driver Oncogeneを過剰活性化することによる抗腫瘍効果を誘導するという新しいコンセプトの治療戦略開発を目指す。そのために、発現誘導型ベクターを複数作製し、Driver Oncogeneからの増殖シグナルの強度が細胞増殖に与える影響を質的および量的の両方の面から解析する。過剰すぎる増殖シグナルが持つ細胞への負の影響を明らかにすることで、新たな弱点を解明することであり、それらを標的とした新規治療法の開発を目指す。 2020年度は各種誘導発現ベクターを作製し、ドライバーがん遺伝子(EGFR活性化変異、ROS1またはALK融合遺伝子と、それらの薬剤耐性変異体)を発現する細胞株を作製(一部は誘導下で発現するものも同時に作成)。また、ENU mutagenesisの手法を用いて、ドライバーがん遺伝子に対する耐性細胞を樹立したり、患者由来がん細胞を分子標的薬に長期間暴露し、抵抗性細胞を取得する過程で薬剤依存的増殖を示す細胞を得た。それらを用いて、過剰すぎるがんの増殖シグナルが誘導する脆弱性を探索中である。 論文として発表した主たる成果としては次のとおりである。肺がんの3割を占めるEGFR活性化変異の中でも、低頻度に見つかる「マイナー」変異について、その薬剤感受性・抵抗性についての構造面からの解析と、活性化機構について実験的におよびコンピュータシミュレーションを駆使した解析から解明し、論文として投稿、採択に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種Driver Oncogene変異を有する肺がんを中心に、所属機関が擁するがん研有明病院で治療を受けている患者さんの中で、IRBで承認された臨床研究への参加について同意を頂いた患者検体(胸水、生検など)から細胞株を樹立に挑戦し、複数成功しており、現在も樹立中の細胞株も有している。 また、薬剤耐性モデルを作製しながら、過剰なドライバーがん遺伝子からのシグナルを有する細胞株を樹立する実験からは、複数の細胞株から、低濃度の薬剤存在下でより増殖が亢進するという現象を確認しており、モデル細胞の作成が順調に進んでいる。また、BaF3細胞に各種Driver Oncogene(EGFRやALK融合遺伝子などと、その薬剤耐性変異株)を過剰発現させ、薬剤存在下でより増殖が亢進する細胞株の作製も順調に進んでいる。 また、EGFR変異陽性がんのなかで低頻度に見つかる「マイナーなドライバーがん遺伝子変異」が、標準治療として使用されている一部のEGFR阻害薬に抵抗性を示す構造的なメカニズムを解明し、その変異体に特異的な薬剤を発見し報告するなど、複数の論文発表に繋がる成果もあげており、一部は予定以上の研究進捗といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に順調な研究の進展が見られたため、引き続き下記の様に研究を推進させる。 2021年度は昨年度に引き続き、ドライバーがん遺伝子陽性で薬剤耐性となった患者検体からの培養細胞株の樹立を続けるとともに、in vitroでの耐性細胞株樹立を継続し、薬剤に依存して増殖が亢進するモデルの確立を目指すとともに、これまでに樹立した各種細胞株を用いて、以下のようにして解析を継続して進める。 (a)過剰なDriver Oncogene活性化誘導前後の細胞の増殖速度、造腫瘍性、細胞周期の変化。(b)細胞競合:性質の異なる細胞(薬剤への依存性の異なる細胞株)をin vitro, in vivoで競合培養し、様々な薬剤存在下でのその比率の推移を調べる。過剰すぎるDriver Oncogeneシグナルによる細胞増殖抑制・細胞死誘導の分子機構解析については、Western Blot法や抗体アレイ、RNAの網羅的発現解析、リン酸化proteome、shRNA、標的遺伝子のノックアウト、標的既知の阻害剤によるスクリーニング等の手法を駆使して行う。Keyとなる分子や薬剤を発見した場合には、そのたんぱく質/因子/薬剤の標的についての機能解析を進めるとともに、Driver Oncogeneの過剰活性化を模擬するような低分子化合物(アゴニスト)の探索を試みることで、ケミカルにDriver Oncogeneの過剰活性化による増殖阻害が誘導できるかどうか検討したり、薬剤依存的増殖をする細胞に特異的に毒性を示す薬剤等を探索する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において複数回の緊急事態宣言が出された状況下で、在宅勤務推奨時期が発生したため、データ解析等の在宅で実施可能な研究を優先して進め、初年度購入予定だった研究試薬の一部を次年度(2021年度)に購入する予定に変更し、研究を実施するといったフレキシブルな研究計画推進の調整を行った。次年度使用額については、2021年度分として請求した助成金と併せて、本研究に必要な研究試薬の購入にあて、速やかな実験実施と研究遂行を目指す。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Gilteritinib overcomes lorlatinib resistance in ALK-rearranged cancer2021
Author(s)
Mizuta Hayato、Okada Koutaroh、Araki Mitsugu、Adachi Jun、Takemoto Ai、Kutkowska Justyna、Maruyama Kohei、Friboulet Luc、Katayama Kazuhiro、Ma Biao、Sasakura Yoko、Sagae Yukari、Kukimoto-Niino Mutsuko、Shirouzu Mikako、Takagi Satoshi、Simizu Siro、Nishio Makoto、Okuno Yasushi、Fujita Naoya、Katayama Ryohei, et al
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 12
Pages: 1261
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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