2020 Fiscal Year Research-status Report
四重鎖核酸の動態攪乱に対するがん細胞選択的脆弱性の分子基盤
Project/Area Number |
20K21555
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
清宮 啓之 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 部長 (50280623)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
Keywords | グアニン四重鎖 / がん / テロメア / 薬物療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
テロメスタチンやPhen-DC3などのグアニン四重鎖(G-quadruplex: G4)安定化化合物(G4リガンド)処理によって増殖が強く抑制される14種類のがん細胞株について免疫蛍光染色を行ったところ、G4リガンド処理により53BP1やγH2AXなどのDNA損傷応答因子の核内フォーカスが顕著に誘導される細胞株は6種類であった。抗G4抗体を用いた免疫蛍光染色により、39種類のがん細胞株(=G4リガンド感受性細胞株および耐性細胞株を含む)の核内におけるG4形成量を定量した。その結果、G4の形成量と発現が逆相関する遺伝子として複数のテロメア関連因子およびDNA複製関連因子が同定された。G4の形成量とG4リガンドに対する感受性、およびG4の形成量とDNA損傷応答性との間には明確な相関は認められなかった。次に、43種類のがん細胞株のエクソームデータとG4リガンド感受性の相関解析を実施した。その結果、G4リガンド感受性と正の相関を示すDNA損傷修復関連遺伝子変異を複数同定した。これらの遺伝子変異は、DNA上におけるG4の安定化に対して合成致死的に働くことで細胞脆弱性をもたらす可能性が示唆された。 一方、G4リガンドを処理してもDNA損傷応答が生じない残りのリガンド感受性がん細胞株においては、陽性対照としてDNAトポイソメラーゼII阻害剤エトポシドを処理すると顕著なDNA損傷応答が観察された。したがって、これらのがん細胞株はDNA損傷応答機構を保持しつつも、G4の安定化によるDNA損傷に対しては耐性であり、G4リガンドは別の作用機序を介してこれらの細胞株の増殖を抑制していることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、標準的G4リガンドであるテロメスタチンとPhen-DC3に対する種々のがん細胞株の感受性を基盤として、核内イベントを中心とした各種相関解析を実施することで、これらのG4リガンドに対する感受性と相関する候補遺伝子変異群のリストを取得するところまで進んだ。一方、我々はこれまでに、G4リガンドに高感受性でありながら同剤処理に対してDNA損傷応答を示さないがん細胞株を見出していたが、今年度は複数のDNA損傷応答マーカーおよびがん細胞株を用いて解析を拡充することにより、G4リガンドが発揮するDNA損傷非依存的な制がん効果は、様々な細胞株で広く認められることを確認することが出来た。特に、この効果は特定のがん種に留まらず、様々な臓器由来のがん細胞株で確認された。我々はすでに、G4形成配列を持つレポーター遺伝子の転写・翻訳がG4リガンドによって選択的に抑制されることを見出しており、これらの結果から、DNAのみならずRNAもG4リガンドの標的となることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
種々のがん細胞株間の感受性の差異が特に大きいG4リガンドとしてPhen-DC3に焦点を絞り、同剤に耐性のがん細胞株を選抜し、小分子干渉RNAによるノックダウンなどで感受性規定候補因子の機能を修飾(あるいは候補遺伝子変異を細胞内に導入)し、G4動態および薬剤感受性の変化を観察する。また、G4安定化がもたらす細胞増殖阻害効果の根拠となる、転写・翻訳レベルでの標的因子を探索する。具体的には、Phen-DC3処理でレベル低下をきたす遺伝子・タンパク質群をGeneChipマイクロアレイおよびプロテオーム解析により同定・選抜し、これらの機能を修飾したときの細胞生存・増殖性の変化を検証する。
|
Research Products
(12 results)