2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K21562
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
春野 雅彦 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 室長 (40395124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 弘 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (80304038)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 支配関係 / 協力 / 競合 / fMRI / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒトと、ヒト同様に強固な序列関係を持ち高度な意思決定が可能なマカクザルを被験者として、支配関係のある複数被験者の協力・競合の脳内選択過程の解明とそのための実験システム開発を行う。 当該年度においては、透明なタッチパネルを通して相手の表情が見える状況で社会的意思決定課題を行うシステムを完成させ、眼球運動計測システムにより、相手の顔を含むどこを見ているか追跡可能とした。また、光学シャッターシステムを導入し必要な時のみ相手が見える実験設定が可能となった。 この実験システムを用いて被験者の訓練を行った。自己の報酬とエアパフの量がともに大きいオプション、あるいは、ともに小さいオプションを選択するセルフ条件、自己の報酬と相手のエアパフの量がともに大きいオプション、あるいは、ともに小さいオプションを選択するソーシャル条件の両者でオプション選択を行えるようになり、ソーシャル条件における行動は相手との相対的地位に依存して異なった。 また、行動選択とその反応時間を分析するために、価値関数を含むDrift Diffusion Modelを構築した。その結果、ヒト、非ヒト霊長類ともにセルフ条件、ソーシャル条件の協力率の差を説明するモデルパラメータを特定した。ヒトfMRIデータの解析の結果、ソーシャル条件での扁桃体の活動が、オプション選択に、相手の電気刺激の大きさを考慮する程度と相関を示した。このことは、向社会行動の行動選択とその反応実験の決定における扁桃体の重要性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、ヒトと非ヒト霊長類の両方において、自己の報酬と電気刺激(非ヒト霊長類ではエアパフ)の量がともに大きいオプション、あるいは、ともに小さいオプションを選択するセルフ条件、自己の報酬と相手の電気刺激の量がともに大きいオプション、あるいは、ともに小さいオプションを選択するソーシャル条件を含む課題を設計し、実験を実施した。ヒトと非ヒト霊長類のデータを統一的に解析する価値関数を含むDrift Diffusion Modelを構築した。その結果、霊長類の向社会行動における共通点とヒトに特有の点を明らかに出来る準備が整った。ヒトfMRIデータの解析の結果、ソーシャル条件での扁桃体の活動が、オプション選択に、相手の電気刺激の大きさを考慮する程度と相関を示した。このことは、向社会行動の行動選択とその反応実験の決定における扁桃体の重要性を示唆する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、視線とfood testにより、非ヒト霊長類間の順序関係を定量化し、順序関係と向社会行動の関係を明らかにした後に、ヒトfMRIの結果を参考に、神経活動と向社会行動の因果関係を示す実験へと移行する。また、ヒト研究に関しては、モデルパラメータの再現実験を加えた後に、扁桃体、線条体の機能を報告する論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
前年度、新型コロナ感染症の影響で実験の進展に遅れが生じた。そのため、有期研究技術員を雇用して実験実施を加速するとともに、新たにデスクトップ計算機を導入し、解析の高速化をはかる。また、新たに霊長類社会実験システムに顔の温度センサーを導入してモダリティを増やす。研究分担者にこのシステムを用いて実験を実施してもらいその有効性を検証する。
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