2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K21562
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
春野 雅彦 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 室長 (40395124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 弘 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (80304038) [Withdrawn]
渡邉 慶 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (00772740)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 支配関係 / 協力 / 競合 / fMRI / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒトと、ヒト同様に強固な序列関係を持ち高度な意思決定が可能なマカクザルを被験者として、社会的優位階層支配関係のある複数被験者の協力・競合の脳内選択過程を明らかにすることを目的とし、以下の実験を実施した。 ヒトを対象とした実験では上下関係や優位性に対する考え方を反映する性格特性である社会的優位志向性(SDO)が、社会的意思決定にどのような影響を与えるかを調べた。具体的には、まず参加者からSDOを含む人格特性スコアを収集し、次に異なる勝率(75%、50%、25%)を持つ対戦相手と競技ゲームを行うよう依頼した。参加者が社会的優位性の階層をうまく構築したことを確認し、その後、主タスクの各試行において、競技ゲーム後に参加者と対戦相手にボーナスを分配した。さらに、参加者にボーナスの分配(有利、公正、不利)を4段階(1から4)で評価してもらった。その結果、ボーナス配分に対する参加者の態度はSDOに影響され、SDOの低い人ほどボーナスの差が大きいことを嫌うことが示された。さらに、優れた相手と対戦した場合、ボーナス差とSDOの相関は弱まった。このことは、SDOが社会的ヒエラルキーや相対的地位の認知に影響を与え、社会的評価に影響を与えることを示唆している。 マカクザルを被験者とした実験では大阪大学の渡邉と共同で、マカクザルに自己の報酬と相手へのエアパフ刺激のペアとして大・大か小・小を選ぶ課題を訓練した。その結果、マカクザルが自分の報酬を犠牲にして相手のエアパフを小さくすることを見出し、社会的情報処理に関わる計算メカニズムに関する知見を得た。この成果によって、人間の社会的行動に関する神経機構基盤の理解が進み、新たなコミュニケーションデバイス開発の発展に寄与することが期待される。
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