2020 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリア膜タンパク質を標的とした副作用の少ない革新的認知症抗体療法の開発
Project/Area Number |
20K21577
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中曽 一裕 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30379648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 正明 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40346367)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ミクログリア / xCT / アルツハイマー病 / 認知症 / 抗体療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)に代表される認知症治療において,近年,特定の抗原を認識する抗体を利用した治療の研究が行われている.ADにおけるアミロイドβ(Aβ)に対する抗体療法,ワクチン療法がその代表だが,これまでのADに対するAβ抗体医療は効果と副作用のバランスから,実用レベルには至っていなかった.抗体を用いた治療を試みる場合,自己免疫機序の副作用を起こさないためには,いかに「正常タンパク質・正常抗原を攻撃しないか」が重要であり,ターゲットとすべき抗原は,正常時には発現がなく,認知症など異常が生じた時に限定して発現誘導されるものが理想である.本研究は,条件を満たす抗原として,ミクログリア細胞膜に病態環境下でのみ発現し,細胞外にグルタミン酸を放出するシスチン・グルタミン酸交換系トランスポーター“ System xc- ”の構成分子「xCT」に注目し,副作用が少なく,かつAD以外の認知症も含めた認知症全般に応用可能な抗体療法の可能性を探るものである. R2年度は,(1)ファージディスプレイ法によるxCT細胞外ドメインを認識するFab抗体のスクリーニングを行った.抗体スクリーニング用ペプチドとして,xCT細胞外ドメインでトランスポート機能に直結する部位,かつヒトとマウスで共通なアミノ酸配列部分,を満たすペプチドを用いた.その結果,5種の候補抗体が得られ,いずれもウエスタンブロットでxCTを特異的に認識することを確認した.また,(2)ミクログリアによる検討に先行して,xCTを発現し,細胞増殖アッセイにヒト肝癌由来細胞HepG2が使用できることを見出し,細胞増殖への抑制効果があるかを検討したところ,一部の抗体に軽度ながら細胞増殖を抑制するデータが得られた.(3)遺伝子改変によるADマウスを飼育し,月齢ごとのADとしての病理変化(老人斑など)とxCT発現を検討する試料を作成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における最大の難関であり,かつ律速段階ともいうべき抗体スクリーニングが完了しており,引き続き抗体の特性分析や,細胞における効果,個体における効果を研究できる状態となっている. また,機能分析のための細胞の準備,動物(ADモデルマウス)の準備とも順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られたxCT細胞外ドメインを認識するFab抗体を用い,抗体のcharacterizationを引き続き行うとともに,ミクログリアおよび他のxCT発現細胞における増殖・活性化の抑制効果,グルタミン酸放出抑制効果,サイトカイン放出抑制効果があるかどうかを検討する. ADモデルマウスに,抗体を皮下全身投与および髄腔内投与を行い,ミクログリアxCTに抗体が集積するか否かの検討. 簡易モデルとしてLPS投与モデルマウス(ミクログリア活性化として)を用いて同様の検討. 病理所見および行動分析による認知機能に効果があるか否かの検討を行う.
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Causes of Carryover |
消耗品(抗体類)の購入の時期ずれのため. 初年度は抗体作製が中心,次年度は抗体を用いた機能分析が中心となるため,当初予定通り,消耗品購入に当てる予定である.
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