2021 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス依存的に産生される小ペプチドの特性解析と神経変性疾患への関与解明
Project/Area Number |
20K21578
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今泉 和則 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (90332767)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 小胞体ストレス / 神経変性疾患 / ストレスセンサー / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、小胞体ストレスセンサーの活性化時に産生される小ペプチド(小胞体マイクロフラグメント)の生物学的機能の解明と病態への関与を明らかにすることを目的としている。今年度は以下のことを明らかとした。1)アルツハイマー病発症におけるマイクロフラグメントの役割;BBF2H7小胞体マイクロフラグメントはアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパクの凝集を促進する。凝集性が低いアミロイドβ分子種であるアミロイドβ1-40 5μMに対してBBF2H7マイクロフラグメント0.15μMを混合して37℃で24時間インキュベートすると凝集体を形成する。この凝集体を神経芽細胞腫SK-N-SH細胞に作用させると48時間以内に細胞が死滅した。アミロイドβ1-40あるいはBBF2H7マイクロフラグメントをそれぞれ単独で作用させても同じ濃度では細胞毒性を示さないことから、小胞体マイクロフラグメントがアミロイドβ1-40の凝集を促進するとともに細胞毒性をも増強することが明らかになった。2)アルツハイマー病患者の死後脳におけるBBF2H7マイクロフラグメントの発現・局在;日本ブレインバンクネットおよび医療法人さわらび会福祉村病院・長寿医学研究所より提供されたアルツハイマー病患者死後脳の凍結組織とパラフィン切片からBBF2H7マイクロフラグメントの検出を試みた。作製したBBF2H7マイクロフラグメント特異的抗体を用いてパラフィン切片の免疫染色を行ったところ、主に神経細胞内から小胞体様の形態的特徴を持つシグナルが検出された。しかしながら非アルツハイマー病死後脳の検体においても同様の所見が得られており、両者に有意な差は観察されなかった。従って、本研究からはBBF2H7マイクロフラグメントの病態形成への関与を裏付ける証拠は得られなかった。
|