2021 Fiscal Year Research-status Report
Pathophysiological significance of astrocyte in developmental disorders with gene abnormalities
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20K21589
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Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
永田 浩一 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, 部長 (50252143)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 発達障害 / アストロサイト / 遺伝子異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉性障害(ASD)や知的障害(ID)などの発達障害は人口の約10%に発症しうる。最近の研究から、従来はニューロン機能を支える裏方と考えられてきたグリア細胞(アストロサイトなど)の異常も、発達障害の病態形成に必須の役割を果たすことが確実視されている。 アストロサイトは神経回路の発達・機能形成に重要な役割を果たすと共に、遺伝子異常の場合はニューロン同様に機能障害を受け、発達障害の病態形成に重要な役割を果たすと考えられる。しかし、膨大な遺伝学的データが蓄積される一方、数少ない病態メカニズム研究(生化学・形態学・細胞生物学研究)はニューロンに集中し、アストロサイトを含むグリア細胞の分子病態意義は殆ど不明なままである。そこで私どもはアストロサイトの機能障害に基づく分子病態メカニズム解明のために「アストロサイト解析バッテリー」を構築して病態メカニズム解析を行った。mRNAスプライス分子RBFOX1, 転写因子NR1D1, 選んだ。その結果、細胞内シグナル分子Gi2の発現を抑制したアストロサイトは生後14日の時点で局在の異常が認められた。一方、ニューロンでGi2の発現を抑制した時にはアストロサイトの分布・形態は影響を受けなかった。一方、アストロサイトの遺伝子異常が大脳皮質ニューロンのシナプス機能(NMDA受容体機能、自発発火)に及ぼす影響を、電気生理学的に解析したところ、自発発火が減弱する傾向が認められた。 次に、Gi2の発現を抑制した初代培養アストロサイトの生化学・細胞生物学解析を行なった。培養開始直前に発現抑制ベクターを導入し、20日後に形態解析及び化学伝達物質(D-セリンとアデノシン)の放出を測定したところ、形態異常とアデノシンの放出が阻害された。 以上のことは、Gi2の遺伝子異常はアストロサイトの機能を障害し、このことが発達障害の病態に関連する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では「アストロサイト解析バッテリー」の構築に取り組んだ。特に細胞内シグナル分子Gi2をモデル分子として、この”バッテリー”に含まれる個々の実験の実施条件の最適化を進めていった。その結果、Gi2については有用性を検証しながら実験データを集積できた。その一方、当初解析予定であったRBFOX1とNR1D1についてはデータ収集がやや遅れている。しかしながら、計画を完了する目処はついていることから、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験系の条件設定に当初の予定よりも時間がかかったことが原因で、RBFOX1とNR1D1については解析が完了していない。今後はこの”解析バッテリー”を活用してこれらの分子の病態解析に取り組みたい。また、解析対象を他の発達障害原因遺伝子まで広げてゆき、発達障害の病態におけるアストロサイトの役割について解析を進めてゆきたい。
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Causes of Carryover |
”解析バッテリー”の実験系の条件設定に当初の予定よりも時間がかかったことが原因で、RBFOX1とNR1D1については解析が完了していない。その結果として次年度使用額が生じた。 今後の使用計画としては、RBFOX1とNR1D1の解析のための物品費と実験補助業務のために使用し、研究計画を完了したいと考えている。
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