2020 Fiscal Year Research-status Report
高中性脂肪血症による急性膵炎のマウスモデルの確立と治療法探索
Project/Area Number |
20K21595
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 啓明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80610211)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 急性膵炎 / 高中性脂肪血症 / アポリポ蛋白 / 動物モデル / 治療法探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性膵炎(AP)は致死率が高いが治療法の乏しい急性疾患である。胆道系疾患、アルコール多飲、高中性脂肪血症(HTG)などが危険因子となるが、適切な動物モデルに乏しく、その分子機構は十分解明されていない。最近我々は、重度HTGの病態生理的マウスとそのレスキューモデルを確立した。重度HTGの原因遺伝子であるアポリポ蛋白A-V(apoA-V)の欠損マウスは、高炭水化物食や高脂肪食によりヒトと同様の環境因子による重度HTGを来す。環境因子によるVLDL蓄積は肝臓の脂質合成を制御する転写因子SREBP-1c欠損によりレスキューできる。本研究課題では、この申請者が確立してきたHTGとそのレスキューモデルを活用して、膵炎の主要な原因の一つである重度HTGによる急性膵炎(HTG-AP)のマウスモデルを確立し、膵炎発症の分子機構解明と、新規治療法開発に挑む。予防困難で特効薬の乏しい膵炎の病態解明と創薬を推進する知見を得ることを目的としている。 本年度は、HTG-APの動物モデルの確立とメカニズム解明を目指して研究を行なった。野生型マウスや、申請者らが確立してきたHTGモデル(apoA-V欠損マウス)に、膵臓の腺房細胞を障害する負荷(セルレイン投与)を加えることにより、血中アミラーゼの上昇、膵腫大、膵臓の炎症系遺伝子のmRNA発現亢進を来すなど、急性膵炎が誘発されることを見い出した。apoA-V欠損マウスは、通常食では軽度なHTG(約500 mg/dL前後)を示すが、加齢、高炭水化物食、薬剤(LXRアゴニスト)等の環境因子の負荷により、重度HTG(1,000 mg/dL以上)を来たす。この重度HTGは転写因子SREBP-1cの欠損によりrescueされる。今後さらに、SREBP-1c欠損モデルなどを活用した研究項目により、HTG-APの分子機構解明と創薬標的同定を目指し、研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
急性膵炎(AP)は致死率が高いが治療法の乏しい急性疾患であり、胆道系疾患、アルコール多飲、高中性脂肪血症(HTG)などが危険因子となるが、適切な動物モデルに乏しく、その分子機構は十分解明されていない。本研究課題は、申請者が確立してきたHTGとそのレスキューモデル(アポリポ蛋白A-V(apoA-V)の欠損マウス、転写因子SREBP-1cとの両欠損マウスなど)を活用して、膵炎の主要な原因の一つである重度HTGによる急性膵炎(HTG-AP)のマウスモデルを確立し、その分子機構を解明、創薬標的を探索することを目的としている。 3つの主たる研究項目、A) HTG-APの動物モデルの確立、B) HTG-APのメカニズムの解明、C) HTG-APの新たな治療法探索のうち、本年度はAおよびBの一部を予定していた。当初の研究計画の通りこれらの項目に取り組み、一定の成果を得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。また、次年度の研究項目のための準備も整っており、現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討結果から、野生型マウスや、申請者らが確立してきた重度高中性脂肪血症(HTG)のマウスモデル (apoA-V欠損マウス)に、膵臓の腺房細胞を障害する負荷(セルレイン投与)を加えることにより、血中アミラーゼの上昇、膵腫大、膵臓の炎症系遺伝子のmRNA発現亢進を来すなど、急性膵炎(AP)が誘発されることが分かり、これらのモデルを活用することにより、重度HTGによる急性膵炎(HTG-AP)のメカニズムが探求可能であることが分かった。 本研究課題では、A) HTG-APの動物モデルの確立、B) HTG-APのメカニズムの解明、C) HTG-APの新たな治療法探索を目指しているが、これまで得られた知見を元に、研究計画通り、次年度の主たる研究項目であるBおよびCを引き続き実施する予定である。その際には、重度HTGをレスキューできるモデル(apoA-VとSREBP-1cの両欠損マウス)が役立つと考えられ、研究項目として当初より予定しているが、このモデルを用いた検討も既に進行中であり、研究計画通りに進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進展しているが、本年度と次年度にまたがる研究項目があり、次年度使用額が生じた。当初の研究計画通り、今後も研究をすすめる予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Current Diagnosis and Management of Primary Chylomicronemia2021
Author(s)
Hiroaki Okazaki, Takanari Gotoda, Masatsune Ogura, Shun Ishibashi, Kyoko Inagaki, Hiroyuki Daida, Toshio Hayashi, Mika Hori, Daisaku Masuda, Kota Matsuki, Shinji Yokoyama and Mariko Harada-Shiba
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Journal Title
J Atheroscler Thromb
Volume: accepted
Pages: accepted
Peer Reviewed
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