2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21601
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
豊島 文子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (40397576)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 皮膚 / メカノバイオロジー / 老化 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、皮膚のかたさが表皮幹細胞の動態におよぼす影響を解明し、老化や肥満に伴う皮膚の変化との関連を解析することを目的とした。本年度は、加齢と肥満マウスの表皮基底細胞の形質解析を実施した。加齢マウスでは、皮膚表皮基底細胞のヘミデスモソーム脆弱化と、それに伴う非対称分裂、細胞分化が亢進することが報告されている。同様の現象は、高脂肪食を付加した肥満マウスの足底部皮膚でも観察された。加齢と肥満の共通機構を探るため、足底部の表皮基底細胞のRNAseq解析を実施した結果、加齢・肥満でともに発現量の変化する200遺伝子を同定した。GO解析の結果、カルシウムシグナルに関わる遺伝子発現が共通に上昇していることが分かった。 K14creERT2; R26GCaMP3マウスを用いて足底部皮膚のカルシウムイメージングを行ったところ、加齢・肥満マウスでは、ともに、40秒以上の持続的な長期カルシウムパルスが優位に頻発していることが分かった。次に、AFMによる2次元フォースマップにより皮膚のかたさを測定した結果、加齢・肥満マウスでは真皮がかたくなっていることが分かった。さらに、メカノセンサであるPiezo1を表皮基底細胞特異的にKOしたところ加齢・肥満皮膚で起こる長期カルシウムパルスの頻度が減少した。さらに、Piezo1 cKOマウスでは、加齢・肥満による表皮基底細胞の分化亢進、ヘミデスモソームの脆弱化、非対称分裂の亢進が抑制されており、基底細胞の形質が改善していることが分かった。以上の結果から、HFDによる真皮の硬化が表皮基底細胞でのPiezo1の持続的活性化を誘導し、カルシウムが持続的に流入することによって、基底細胞の分化やヘミデスモソームの脆弱化が起こることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加齢と肥満に伴う表皮幹細胞の分化亢進・ヘミデスモソームの脆弱化が真皮のかたさに依存することを示した。本課題の核となる発見であり、計画が順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)皮膚の老化に伴う真皮硬化を誘導する分子の探索 2)真皮のかたさと血管の関連解析
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