2020 Fiscal Year Research-status Report
機能性消化管障害の病態にシナプス接着分子がどのように関与するか
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20K21605
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
有賀 純 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (10232076)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 機能性消化管障害 / 脳腸相関 / シナプス接着分子 / 機能性ディスペプシア / 過敏性腸症候群 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では機能性消化管障害の病態にシナプス接着分子がどのように関与するのかを明らかにする。機能性消化管障害とは、慢性の腹部症状を呈するにもかかわらず、検査によって器質的疾患(がん、潰瘍など)が認められない機能性の消化器疾患群であり、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群が含まれる。一般成人における有病率はそれぞれ10-44%、10-15%と高い。病態にはゲノム、消化管運動異常、内臓知覚過敏、粘膜透過性、腸内細菌、心理社会的因子などが関与し、これらを総合的に捉える概念として「脳腸相関」の重要性が明確になっているが、未だ不明な点が多い。 そこで本研究では中枢神経系と腸管神経系に発現するシナプス接着分子「LRR膜貫通タンパク質群」に注目する。LRR膜タンパク質欠損マウス群における腸管機能・腸管神経系の異常は系統的に解析されておらず、LRR膜タンパク質が脳腸相関の生理的な調節に役割を担うのか、担うとすれば、どのような分子作用機序で役割を果たすのかが明らかでない。 維持している複数系統のLRR膜貫通タンパク質欠損マウスを対象とした。摂食行動を定量的に把握するために、定量可能な小型粒状餌と自動給餌装置を利用して解析した。一部の系統について、マグヌス管を利用した腸管機能解析を行った。これらの結果と脳腸相関を司る神経回路における各LRR膜タンパク質の分布パターン解析から、興味ある系統を絞り込むことができた。今後、分子マーカー解析、分子作用機序解析、部位特異的な遺伝子機能阻害などを行うことにより、LRR膜貫通タンパク質群の消化管機能制御における役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自動給餌装置を用いた摂食行動の解析、摘出消化管を用いた消化管機能解析、消化管におけるLRR膜タンパク質分布の解析を行い、更なる解析の対象となる分子群を絞り込むことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
この成果を基に、遺伝子改変マウスと機能遺伝子もしくはレポーター遺伝子の導入などの手法を組み合わせて、脳腸相関に関わる神経回路レベルでの解析を進める。これらの解析を通じて、LRR膜貫通タンパク質群が機能性消化管障害の病態とどのように関わるのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
摂食行動解析装置を自ら作製したために、次年度使用が生じた。残額は次年度に予定されている腸管機能解析および分子機能解析に当てる。
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