2021 Fiscal Year Research-status Report
Identification of HLA class I molecules with the capacity of mediating lipopeptide presentation
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20K21615
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉田 昌彦 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (80333532)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | HLA / リポペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はアカゲザルエイズモデルの免疫解析をもとにして、MHCクラス1分子によるリポペプチド抗原提示の実態を明らかにしてきた。本研究においては、サルからヒトへの展開と新たなヒト免疫病態の解明を目指しており、その端緒としてヒトリポペプチド提示分子の同定は極めて重要である。前年度、リガンド依存的リフォールディングアッセイを活用し、リポペプチド依存的に安定複合体を形成するHLA-Aローカスの1アリル(LP1a)とCローカスの1アリル(LP1c)を絞り込んだ。これらのHLAクラス1分子は、既知のアカゲザルリポペプチド提示MHCクラス1分子(Mamu-B*098, Mamu-B*05104)とは異なり、リポペプチドだけでなくコンベンショナルなペプチドも結合する能力を有していた。そこで本年度、ペプチドおよびリポペプチドを結合したLP1a複合体、LP1c複合体のX線結晶構造の解明により、この"dual binding"能力の分子基盤を追究した。その結果、P2アミノ酸(ペプチドの場合)あるいはミリスチン酸(リポペプチドの場合)を収納するBポケットの構造がフレキシブルに変化することを見出した。LP1c重鎖においては、リガンド結合により9番目のセリン残基を中心とした水素結合ネットワークの再構築が生じ、側鎖の配向性を変化させることによりペプチドおよびリポペプチドの結合が可能になることが明らかとなった。他方LP1a重鎖においても9番目のセリン残基を含む水素結合ネットワークの再構築が生じるが、その側鎖の配向性には変化はなく、水素結合パートナーである70番目のヒスチジン残基のイミダゾール環がローテーションすることによりペプチドおよびリポペプチドの結合が可能になることが判明した。これらの結果は、LP1a, LP1c分子の細胞表面発現がTAPペプチドトランスポーターに依存することとも符合した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ペプチドおよびリポペプチドを結合するHLAクラス1分子(LP1a, LP1c)を同定し、その分子基盤の解明に成功した。 2)すべての有核細胞においてLP1aを発現したトランスジェニックマウスを作成し、順調に交配を進めている。次年度に向けて、LP1a分子の機能を個体レベルで追究する解析基盤が確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の主たる方向性は以下の2点に集約される。 1)リポペプチド「結合」HLAクラス1分子のリポペプチド「提示」機能の実証がクリティカルである。LP1aトランスジェニックマウスの樹立が進んでいるので、これを活用し、リポペプチド特異的LP1a拘束性T細胞の存在証明と機能解析が喫緊の課題である。 2)リポペプチドを結合するヒトHLAクラス1分子として2アリル同定したが、HLAクラス1分子の高度の多型性を考慮すると、まだ全容解明には至っていない。これまでの絞り込みで漏れた分子群の精密な解析とともに、特定集団(病気の感受性や抵抗性を有する集団)におけるリポペプチド結合HLAクラス1アリルの保有率の評価が重要な課題である。
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Causes of Carryover |
今年度まで、研究代表者がすでに確立していた実験系を最大限に活用して、ヒトリポペプチド結合分子の同定と構造解析を主軸とした研究を進めてきた。他方、研究戦略の観点から、リポペプチド提示能を検証するための動物実験はその基盤構築(遺伝子改変マウスの樹立)のみにとどめた。多額の経費と労力を必要とする遺伝子改変マウスの免疫解析は、本研究課題の重要な要素であり、次年度に集中的に実施する予定である。
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