2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト膵島内での分化転換機構を応用したiPS細胞からの機能的膵島分化誘導法の開発
Project/Area Number |
20K21631
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古山 賢一郎 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点講師 (10868798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 義弥 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (60359792)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 糖尿病治療 / 多能性幹細胞 / iPS細胞 / β細胞誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
iPS細胞の開発以降、多能性幹細胞の医療応用が様々な分野で推し進められている。糖尿病治療を目指した膵β細胞作製もその一つであるが、未だに臨床応用に至っていない。つまり、インスリンを発現するβ様の細胞 (β-like cells)の創出は比較的容易にできるようになったが、十分な機能をもつβ細胞を再現性良く作製する技術が未だに確立していない。本研究では、これまで他研究者によって取られて来た研究戦略の問題点を踏まえ、以下の4つの戦略的コンセプトでこの難題に挑戦している。(1) 生後の機能的成熟化機構を含む発生現象の再現、(2) ヒト成人β細胞のprofileに基づいたゴールの設定、(3) 機能的単位としての膵島を重視した分化誘導、(4) mono-hormonal化機構の解明。 これらの4ポイントに沿って、研究報告を以下に述べたいが、全体として本年度の進捗状況は予想よりも遅れていると言わざるをえない。特に本研究テーマの要となるべき(2)のヒト成人β細胞のプロファイリングが、未だ道半ばである。原因としてコロナパンデミックの影響が大きい。つまり、予定していた実験には主に脳死ドナー由来の膵島サンプルを用いて解析を進める予定であったが、サンプル供給元の米国ではコロナ下の影響で脳死ドナーからの膵島分離が停止されたからである。この長期化する現状を鑑みて、共同研究先と実行可能な実験から、分担しながら研究を進めている。(4)のmono-hormonal化機構の解析では、膵島の各cell-typeを特徴づけるID genesを同定した(投稿中)。また(3)の膵島形成とβ細胞機能に重要な候補因子を抽出し、現在マウス細胞を用いて解析を進めている。 今年度もコロナ下で研究活動の制限が予想されるが、アフターコロナの状況に研究手法を適応させながら、着実に研究を進めてゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、先に述べた(1)から(4)の戦略的コンセプトに基づいて行っているが、どれも密接に繋がり、並行して進めることで、より効率的な分化誘導プログラムの改良に貢献すると考えられた。しかしながら、2020年度に(2)のヒト成人β細胞のプロファイリングの解明を終えたかったが、コロナの状況下で、大幅な遅れが生じている。コロナ下の人的活動の制限により、研究全体がスローダウンしただけでなく、実験マテリアルの調達が困難であった。つまり計画していた実験には主に脳死ドナー由来の膵島サンプルを用いて解析を進める予定であったが、サンプル供給元の米国ではコロナ下の影響で脳死ドナーからの膵島分離が停止され、ヒトサンプルの入手が極めて困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ前に立案された本研究計画を、コロナ下の状況でも推進・到達可能なものに、修正する必要があると考えられる。 実験サンプルに関しては、北米でのワクチン接種が始まっているとはいえ、パンデミックの収束が未だ見られず、先日(2021年4月13日)よりアルバータの膵島分離センターから脳死ドナー膵島の供給が再び停止されてしまった。この長期化する現状を鑑みて、共同研究先と実行可能な実験から、分担しながら研究を進めてゆきたい。 具体的には(2)のヒト成人β細胞のプロファイリングの解明と (4)のmono-hormonal化機構の解析については、現在もヒトサンプルが入手できている欧州の共同研究先との連携で進めてゆきたい。また、サンプル供給が不安定な現状況下では、ヒト膵島を使った新たな実験が組みにくいため、現在までに取得済のdata (RNA-seq, scRNA-seq他)を基にプロファイリングを進めて行きたい。またヒトprimaryサンプルのかわりにマウス細胞を用いた代替の解析実験も行う予定である。
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Causes of Carryover |
先にも述べた通り、コロナパンデミック下の人的活動の制限により、研究全体がスローダウンしただけでなく、実験マテリアルの調達が困難であった。 実験計画が次年度にずれ込んだが、計画書通りの成果を上げるべく、今年度も一歩一歩着実に進め、遅れを取り戻したい。 今年度は前年度完遂できなかった実験に加えて、今年度分も当初の予定通り行う予定である。
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