2021 Fiscal Year Research-status Report
次世代ヒト化シンジェニックマウスによる腎癌免疫ニッチの再現と治療評価モデルの樹立
Project/Area Number |
20K21652
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 修 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (90260611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嘉島 相輝 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (50842952)
中村 英二郎 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (90293878)
後藤 崇之 京都大学, 医学研究科, 講師 (90806605)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 腎癌 / 癌免疫 / 癌ニッチ / ゼノグラフト / シンジェニックマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年の研究より、免疫不全マウスNOG及びNOG-MHC double knockout mouse(NOG-DKO)に健常人ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を移植し、免疫細胞ゼノグラフトを樹立した。NOGは投与後1か月で移植片対宿主病(GVHD)で死亡したが、NOG-DKOはPBMC投与後1か月でもGVHDで死亡しなかった。Flow cytometry解析でCD4+, CD8+, CD4+CD25+細胞が検出可能であり、NOG-DKOを用いる事の妥当性を確認した。 京都大学で樹立された安定継代可能なPatient-derived xenograft(PDX)であるKURC1に加え、秋田大学で安定継代可能な新規PDXを3系統樹立した。PDXに同一患者由来PBMCを移植する事で、同一患者由来腫瘍組織+免疫細胞PDXを作成した。この新規PDXモデルを用いて、ヒト抗PD-1抗体投与群(n=4)とアイソタイプコントロール投与群(n=5)における治療1か月での腫瘍浸潤リンパ球及びPBMCを解析、比較した。Flow Cytometryの結果、ヒト抗PD-1抗体投与群ではコントロール群に比べ、末梢血中・腫瘍組織中のマウスCD45+に対するヒトCD45+細胞の割合が有意に増加しており、末梢血中のヒトCD8+細胞も増加傾向だった。治療終了後の摘出腫瘍に免疫染色を行った結果、ヒト抗PD-1抗体投与群において、ヒトCD8+細胞及びKi67+CD8+細胞が有意に多く浸潤していた事から、新規PDXでヒト抗PD-1抗体による患者癌免疫反応を再現できた事が示唆された。更にNOG-DKOの脾臓免疫染色の結果、マウス脾臓内に多くのヒトB細胞・樹状細胞・T細胞を認めた。以上の結果から、腫瘍組織+免疫細胞PDXに対する免疫チェックポイント阻害薬治療モデルは癌免疫研究において有用なツールになり得ると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
先述のPDXに同患者由来PBMCを移植することで、より実臨床を反映した同一患者由来腫瘍組織+免疫細胞PDXの作成に成功した。そこで、新規に樹立したこれらのPDXモデルにヒト抗PD-1抗体治療を行ったところ、患者癌免疫反応を再現できた事が示唆される結果をみとめた。これより腫瘍組織+免疫細胞PDXに対する免疫チェックポイント阻害薬治療モデルは癌免疫研究において有用なツールになり得ると想定される結果は得られつつあるが、一方で臨床応用に必要な条件検討を行っており、当初の想定よりは研究に遅れが見られている。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍組織+免疫細胞PDXに対する免疫チェックポイント阻害薬治療モデルが癌免疫研究に有用であるという結果を得られた。 今後は実際にこのモデルを使って抗PD-1抗体が奏功する症例としない症例、同じ症例の奏功期間と抵抗性獲得後で差のある因子を抽出し抵抗性獲得に関わる因子を絞り込む。さらにPD-1の治療効果を予測するバイオマーカーや抵抗性獲得後の治療標的となりうる分子を検索する。
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