2021 Fiscal Year Research-status Report
神経線維腫症Ⅰ型のcutaneous neurofibromaに対する外用薬開発
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20K21653
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 尚樹 京都大学, 医学研究科, 教授 (40378641)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 神経線維腫症Ⅰ型 / MEK阻害薬 / 外用薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経線維腫症Ⅰ型(NF1)は全身に多彩な症候を呈する常染色体優性遺伝疾患である。約3500人に1人の割合で出生し、遺伝疾患の中では比較的頻度が高いとされている。NF1に特徴的な神経線維腫はplexiform neurofibroma(pNF)とcutaneous neurofibroma(cNF)があるが、NF1の95%に合併するcNFは未だに外科的切除以外の治療法がなく、根治できておらず可及的な手術加療を行うのみとなっている。手術加療以外の治療法として、最近、海外ではpNFに対してMAPK/ERK kinase inhibitor(MEK阻害剤)が有用であると報告されている。これはNF1では、細胞レベルでRas/MAPK経路とPI3K/AKT経路が活性化されているからである。本研究では、外科的切除以外に治療薬のないcNFに対して、このMEK阻害剤を用いた、副作用の少ない世界初の外用薬を開発することを目標としている。 本年度は、再度NF1モデルマウスの入手性について検討を行ったが、不可能と判断した。また、論文化はされていないが、海外で本年度にNF1モデルマウスに阻害剤を投与した系の発表が行われていることを確認したため、NF1モデルとして、細胞レベルでMEK inhibitorの影響をより詳細に検討することとした。NF1不死化細胞株を購入し、培養方法の手技および安定性について検討を行った。また、報告されているように持続的なERK経路の活性化が起こっているかをWestern BlottingおよびRealTimePCRを用いて検証した。NF1細胞株は持続的にERKが活性化していること、selmetinib(MEK inhibitor)で増殖およびMAPK経路が阻害されること、またその際に必要な至適濃度を求めた。その結果、NF1細胞によるMEK経路阻害の評価モデルを確立した。当初の計画にはなかったが、形成外科にFACSが導入されることとなり、細胞周期の直接的な評価が可能となった。予備的な段階ではあるがMEK経路阻害によりNF1細胞の増殖が止まる詳細なメカニズムが明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度は動物モデルの断念により遅れが発生したが、細胞モデルでの実験系に切り替え、段階的に結果が得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、NF1細胞株を使用して解析を継続するとともに、患者由来細胞を用いた検討を実施する。 1)患者検体からの細胞培養 NF1患者からcNFを採取し、初代培養細胞を得て、患者由来細胞に対するselmetinibの細胞増殖抑制効果の検証に備える(Hum Mol Genet2000;9(20):3055-64)。NF1患者由来のpNFのcell line( hTERT NF1ipNF95.6他)に対するselmetinibの細胞増殖抑制効果は既に報告されている(ExpNeurol2018;299:289-299)。我々の系でも確認している。cNF由来のcell lineは存在しないため、cell lineに対するselmetinibの細胞増殖抑制効果は、上記pNFの結果で代替する一方、患者由来cNF細胞でもselmetinibの細胞増殖抑制効果が得られるか、検討する。2)cell line(hTERT NF1ipNF95.6)の細胞内シグナル伝達経路の変化の確認 RAS/MAPKおよびPI3K/AKT経路を行うとともに、Selmetinibのシグナル伝達および細胞増殖に対する効果をWestern Blottingなどで定量的に評価する。患者由来cNF細胞でも同様の評価を実施し、selmetinibの細胞増殖抑制作用とその機序を確認する。
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Causes of Carryover |
当初計画では動物疾患モデルを構築することを必要としており、この構築方法の検討を行っていた。ただし、今年度は動物モデルの構築を断念し、細胞モデルでの実験系に切り替え、徐々に成果を得ている状況である。このように当初計画から実験内容を変更したため、次年度に研究を繰り越して実施する必要性が生じたため。
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