2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K21656
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 ゆき 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20645345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 康二 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (50355070)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 精細管 / 3次元培養 / バイオプリンター |
Outline of Annual Research Achievements |
健康な精子を体外で生産することができれば、造精障害による男性不妊を解決する有効な手段となりうる。そこで本研究では、哺乳動物の体外での精子形成を可能にする培養系を構築するため、精細管の3次元構築を試みる。 今年度は、培養に用いる組織・細胞の採取方法と、細胞外基質や培養液などの条件検討を実施した。ウシ4ヶ月齢の未成熟個体から採取した精巣から、トリプシン処理、コラゲナーゼ処理、洗浄のみの方法で精細管を回収した。トリプシンでは精細管の基底膜を崩壊させることなく、管内の細胞を単離できた。一方、コラゲナーゼでは基底膜は崩壊したが細胞単離の効率は良くなかった。また、洗浄のみでは基底膜が維持された精細管構造の単離ができていた。次に精細管構造を維持した状態で、1mm3 以内のサイズに細切した精巣組織片を、マトリゲル包埋ならびにアガロースゲル上気相液相界面培養を数週間~1ヶ月程度行った。HE染色により構造を確認したところ、基底膜はマトリゲル包埋培養で最もよく保存されていた。しかし、エオジンの染色性が培養期間とともに低下しており、タンパク質の合成能が低下している可能性が考えられた。生殖細胞マーカーであるVASAと細胞増殖マーカーである Ki67 を免疫組織化学で染色し培養中の細胞増殖について確認したところ、Ki67陽性細胞はごくわずかであった。 以上より、精細管および細胞の単離方法は決定したものの、現在用いている培養条件では細胞機能が維持されていないことがわかった。次年度は培養液への添加物質を検討する必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染防止対策に伴い、3次元バイオプリンターの選定及び納入に時間を要した。そのため、初年度はバイオプリンティングを用いた検討を実施することができず、細胞単離手法や培養条件の検討のみとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の検討項目は以下を予定している。 1) 精細管培養液の検討:精細管内の細胞機能を維持、および細胞増殖や分化を促すための培養条件を決定する。添加物質として黄体形成ホルモンやテストステロンなどの生殖機能をサポートするホルモンを予定している。 2) バイオインクの検討:バイオプリンターで用いるバイオインク (細胞外基質) 内で細胞の接着や増殖能を検討する。市販のインクに加え、独自での調整も試みる。 3) 3Dバイオプリンターを用いた3次元構造の検討:精細管の微小な管腔構造を再現するための3次元的なデザインを検討する。バイオインクでプリントし、そこに細胞を生着させ長期培養に耐えうる構造か否かを検討する。その上で細胞機能 (増殖・分化) を検討し、最も生体に近い環境を再現できると思われる構造を探索する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で3次元バイオプリンターの納入に時間がかかったため、それを用いた検討が実施できず購入予定であった試薬分の予算が残った。 次年度にその検討を実施するため、バイオインク類・培養用試薬類のほか、細胞機能を評価するための遺伝子およびタンパク質解析、組織学解析のための試薬類に用いる予定である。
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