2022 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染モデルを用いた嗅覚神経系の免疫機構の解明
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20K21666
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
永田 典代 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (30270648)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 神経向性ウイルス / 嗅覚神経系 / 動物モデル / コクサッキーウイルス / コロナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、2013年に西日本でのコクサッキーウイルスB2(CVB2)重症例から分離された株の病原性を利用し、感染マウスモデルを確立した。この感染モデルにおいて、BALB/cマウスはCVB2経鼻接種後に急性嗅球炎を発症するが、興味深い事に、マウス脳実質への拡大は殆どの個体で認められなかった。これらの所見から、病変は、嗅球に限局しており、嗅覚神経系とその他の中枢神経系には何らかのウイルス侵入阻止のための免疫システムが存在すると予想した。一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者においても嗅覚異常が観察されているが、SARS-CoV-2感染マウス、ラット、ハムスターにおいては嗅上皮での感染・増殖が観察されたものの、現在のところ嗅球組織への侵入は認められていない。これまでの解析結果から二つのウイルス感染モデルにおける嗅球組織や中枢神経系への侵入性の違いはウイルスレセプター分子の相違によるものと推察している。 また、SARS-CoV-2感染ハムスターにおいて嗅上皮および肺での感染・増殖が観察されたが、既感染個体に対する再接種では上気道、下気道ともにウイルス感染と複製は抑制された。しかしながら、再感染後、ほとんどのハムスターの気道でウイルス関連RNAが検出され、ウイルスの複製は、上気道よりも下気道でより強く抑制されることが判明した。ただし、いずれの感染段階においても嗅神経系へのウイルスの侵入は観察されていない。現在、嗅神経系におけるグリア細胞の数的変化や活性化について組織学的に検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19対応業務により、計画当初予定していたCVB2感染モデルの解析が遅延している。一方で新型コロナウイルスSARS-CoV-2の動物モデルにおける上気道・下気道感染について詳細な検討を進め成果報告をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引きつづき、ウイルス感染後の嗅球と脳の組織学的解析を進める。CVB2およびSARS-CoV-2感染モデルにおける神経細胞、グリア細胞、免疫担当細胞の数的あるいは特定の分子発現の客観的評価を試みる。
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Causes of Carryover |
OVID-19対応のため一部の研究が実施出来なかった。昨年度までに予定していた病理解析や成果報告をすすめるために予算の使用を計画する。
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