2020 Fiscal Year Research-status Report
顎骨嚢胞自然発症マウスモデルを用いた、顎骨嚢胞形成の分子機構解明への挑戦
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20K21677
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
犬伏 俊博 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (30550941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 晋 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00367541)
黒坂 寛 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (20509369)
内橋 俊大 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (60757839)
山城 隆 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (70294428)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | エナメル質形成不全 / Tmem2 / ヒアルロン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年はまず初めに、Tmem2;K14-CreマウスのマイクロCTによる形態学的解析を行った。4週齢、12週齢または24週齢において、Tmem2;K14-CreマウスはWTマウスに比べてエナメル質の著しい形成不全を認めた。マイクロCT画像を用いて切歯エナメル質の厚みを定老評価したところ、Mutantマウスにおいて有意なエナメル質幅の減少を認めた。特に、エナメル質の咬耗は加齢とともに進行が認められた。これらの結果より、エナメル質の合成量の異常に加えて、エナメル質の質の異常が認められることが示唆された。Mutantマウスの約半数は顎骨内に骨吸収像を認めた。組織学的解析により、Tmem2;K14-Creマウスでは、分下期の細胞数が著しく低下しており、また、基質形成期のエナメル芽細胞おけるエナメル質の形成低下が認められた。次に、Tmem2の局在を調べるためにTmem2 C-Flagマウスを作成し、マウス切歯におけるTmem2の発現を調べた。その結果、Tmem2はマウスエナメル芽細胞の基底膜において強愛い発現を認めた。さらに、ヒアルロン酸(HA)の発現様相を調べたところ、エナメル芽細胞においてHAは発現はなく、基底膜側にHAの強い発現を認めた。これらのことから、Tmem2はエナメル芽細胞の基底膜側に存在し、細胞の極性や細胞間接着に関わっている可能性が示唆された。今後の検討により、Tmem2が欠失することで、細胞極性や細胞接着にどのようなメカニズムで影響が認められるかを検証する必要がある。さらに、ヒトにおいてTmem2の遺伝子変異と顎骨嚢胞の発症やエナメル質の形成不全との関連を詳しく検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Tmem2;K14-Creマウスの表現型の解析に時間を割いた。組織学的解析などにも踏み込んだことで、次年度に予定していたことについても、前倒しで行った。一方、一次繊毛の解析については次年度に行うこととする。これらのことから、計画に一部変更があったが、概ね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究方法②-1.Tmem2のノックアウトが一次繊毛の形態に与える影響を検討する。 一次繊毛のマーカーに対する抗体を用いてTmem2;K14-Creマウスの口腔上皮、ヘルトヴィッヒ上皮鞘ならびに嚢胞組織の免疫組織化学的染色を行い、一次繊毛の形態変化を検出する。 研究方法②-2. Tmem2のノックアウトが一次繊毛の機能に与える影響を検討する。 一次繊毛は様々な細胞外シグナルを受容し細胞内へ伝達している。前述のように、ヘッジホッグシグナル(Hh)の異常は嚢胞形成との関連が疑われる。そこで、Hhシグナル経路を中心に、機能解析を行う。Hhシグナルの解析はPtch1やGli1といったマーカーの変動を調べる。 研究方法②-3. Tmem2の局在やタンパク相互作用を解析する。 CRISPR-Cas9を用いてGFP融合Tmem2を発現する遺伝子組み換えマウスを作製する。申請者はすでに、in vitroにおいてC末端に挿入することで、Tmem2の機能に影響を与えないことを確認している。この遺伝子組み換えマウスを用いて一次繊毛におけるTmem2の局在の有無や一次繊毛関連タンパクとTmem2との相互作用の有無について調べる。
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