2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a new method for dental caries prevention by bacteriophage
Project/Area Number |
20K21680
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小松澤 均 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (90253088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 美樹 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (20527048)
柴 秀樹 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (60260668)
岩野 英知 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (60382488)
比地岡 浩志 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (70305150)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / ミュータンス菌 / う蝕予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
う蝕細菌特異的に抗菌効果を発揮するバクテリオファージを同定し、ファージセラピーによる新規う蝕予防法を提唱することである。本年度はStreptococcus mutansに特異的に感染するファージの同定を下記の項目について行った。 1)唾液中のバクテリオファージの同定:15名のボランティアから唾液を採取し、遠心、ろ過後のサンプルをS. mutansと反応させ、プラークの形成を指標に分離を試みたが、著名なプラークをいずれのサンプルにおいても認められなかった。 2)S. mutansゲノム上に存在するバクテリオファージの探索:当教室で分離したS. mutans 130株のゲノムデータを用いて、バクテリオファージの検索を試みた。その結果、1株において完全長のバクテリオファージゲノム、数株の不完全長のファージゲノムを同定した。 3)S.mutansからのファージの誘発および単離:完全長のファージゲノムが認められた株にマイトマイシンCを作用させ、ファージの誘発を行った。マイトマイシン処理後の培養上清を遠心、ろ過後、S.mutansに対して溶解性を検討したところ、溶菌が認められたことから、S. mutansに対して感受性を示すバクテリオファージを分離することができた。得られたファージ溶液を用いて、S.mutans臨床分離株10株について感受性を検討したところ、8株で感受性を認めた。 4)バクテリオファージゲノム上に存在するendolysinの組換えタンパクの作製:バクテリオファージ上に存在する溶菌活性を有すると思われるendolysinをコードする2つの遺伝子を見出したため、His-tag融合組換えタンパク質の作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定をしていた唾液中からのバクテリオファージの同定には至っていないが、当教室に保有のS. mutans株のゲノム情報を活用し、1株の完全長のファージゲノムを特定し、そのファージゲノム保有株からバクテリオファージの誘発することができた。したがって、本研究の大きな目的であるS. mutansに対して感受性を認めるファージの同定・分離ができたため、順調に進展していると考える。あわせて、ファージゲノム上に存在する新規の溶菌活性を有する因子の同定を行い、組換えタンパク質作成まで進めており、今後、ファージだけでなく本因子を用いたミュータンス菌特異的な排除法について検討していく方向性も示された。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は下記の点について検討を行う。 1)唾液からのファージの同定:唾液検体数をさらに増やし、ポリエチレングリコール6000により、唾液成分を濃縮し、S. mutansに対して感染するファージの同定を試みる。同定できた際にはファージを大量に収取し、ゲノム解析を行い、新規性を検討する。 2)昨年度に得られたファージを大量に単離する。当教室保有のS.mutans100株に対して、感染性の有無を検討する。感染の有無による違いを、ゲノム情報から明らかにし、ファージのレセプターについて検討する。また、他の口腔レンサ球菌種などの細菌に対しても感染性について検討を行い、菌種特異性について検討を行う。また、種々の細菌種を混合した菌液を用いて、ファージ感染実験を行い、S. mutansに対する選択的排除効果を検討する。研究が迅速に進んだ場合には、ラットを用いたう蝕誘発実験でのファージの効果について検証する。 3)他のファージの探索:ゲノム上で不完全長で認められたファージゲノムを保有する株を用いて、マイトマイシンCによる誘発実験を行う。ファージが認められた際には先行して進んでいる検討事項について進めていく。 4)endolysinの溶菌活性、S. mutansの排除効果についての検討:昨年度作成したendolysinについてS. mutansに対する効果を検証する。また、ゲノム上に存在するendolysinを探索し、複数の組換えタンパクを作製し、検討を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた資料収集等の研究活動が進んでおらず次年度に繰り越しとした。次年度は資料収集や研究打ち合わせ等の研究活動費に使用する。
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