2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of 3D-printable restorative material with hardness comparable to human enamel
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20K21685
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
池田 弘 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80621599)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 歯冠修復物 / 生体模倣 / 3Dプリント / 積層造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
積層造形法(3Dプリント)は造形物の形状の自由度が高く、コストメリットもあるため、多くの補綴装置の造形に活用されている。しかし、歯冠修復物で造形可能な材料はレジン系などに限られており、これまでヒトの歯質と同じ機械的性質をもつ材料の報告例はない。そこで本研究では、3Dプリント可能でエナメル質と同じ硬さをもつ新規歯冠修復用複合材料の創製を目的とした。 シリカナノ粒子、アクリル系モノマー、有機溶媒、および重合開始剤を混合し、紫外線で硬化する前駆体スラリーを調製した。この前駆体スラリーをSLA方式の3Dプリンタで造形した。造形物を1150℃で焼成し、多孔質シリカを得た。この多孔質シリカに、アクリル系モノマーを含浸させた後、重合することで新規材料を得た。新規材料の機械的性質は、ビッカース硬さ、曲げ強さ、弾性係数で評価した。物理化学的な性質は、吸水量と溶解量測定にて評価した。 3Dプリントして得られた新規材料のビッカース硬さは約300を示し、エナメル質(270-366)に近い値であった。曲げ強さは100MPaを超え、市販の小臼歯CAD/CAM用コンポジットレジンと同等であった。弾性係数は約20MPaを示し、象牙質(10-20MPa)に近い値であった。また吸水量と溶解量はそれぞれ13 μg/mm3と0μg/mm3であった。新規材料の機械的性質と物理化学的性質は歯冠修復物として使用可能な基準値を満たしていた。ことから、新規材料は口腔内で使用可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規材料のビッカース硬さはエナメル質と同等、弾性係数は象牙質と同等であった。また、曲げ強さ、吸水量、溶解量は、市販のCAD/CAM用コンポジとレジンと同等またはそれ以上であった。以上の結果は、当初の目標とほぼ同じであることから、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、新規材料の摩耗性、造形精度、および細胞毒性について調べる。摩耗性は、衝突滑走摩耗試験にて評価する。比較試料としてヒトエナメル質または牛歯エナメル質を用いる。目標値はエナメル質と同等の摩耗性とする。造形精度は共焦点レーザ顕微鏡と工業用光学スキャナで測定した3Dプリント冠の表面粗さと寸法精度を評価指標とする。3D-CAD解析ソフトを用い、STLデータ(設計目標値)との比較を行う。目標誤差は100μm以内とする。細胞毒性は、L929細胞を用い通法に従って行う。予備実験の結果から毒性は低いことが予想されるが、もし許容を越える毒性がある場合はその原因をクロマトグラフィーやICP発光分析によって特定し、改善する。
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Causes of Carryover |
今年度の使用額は、当初の予算とほぼ同じであるが、コロナ禍の影響で出張に行けなかった分が残った。残予算は、次年度に繰り越し、消耗品などに当てる予定である。
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