2021 Fiscal Year Research-status Report
大規模災害時の個人識別における死後CT利用と多職種連携チーム編成の試み
Project/Area Number |
20K21699
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 真衣子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (70317139)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 大規模災害 / 個人識別 / 死後画像 / 放射線画像診断 / 法医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における大規模災害人の個人識別(身元不明者の身元を確認すること)は、いまだ多くが非客観的手段(顔貌・着衣・所持品など)で行われており、東日本大震災においても90%の遺体はこうした手段でにより判断がなされたため、少なくとも約20名の取り違えが発生した。非災害時における警察主導の個人識別は、DNA、指紋、歯科所見(いわゆる三種の神器)を軸とした客観的方法で行われるが、大規模災害時にはこの方法が平時同様には導入されていない現状がある。一方海外では、近年大規模災害時における個人識別にCT等による画像診断を加えることが国際刑事警察機構において推奨されており、実際の災害時における有用性の経験がすでに報告されている。当研究の主目的は、日本における災害時の個人識別法を国際基準に照らし、画像をとりいれた客観的な方法に転換してゆくことである。本研究は初年度ないし今年度に、災害時に死後CTを利用した経験がある施設への視察を行いその方法の実際について取材することを予定していたが、コロナパンデミックの影響により視察は延期をよぎなくされている。そこで昨年度より発想を転換、法医学の日常業務において、非災害時の身元不明遺体の個人識別に画像をとりいれる試みを開始し、継続している。具体的には、法医学において解剖が実施される際、身元不明遺体に推定人物があり、かつ生前通院先があり生前画像が取り寄せられる場合には取り寄せを県警に依頼し、推定人物の生前画像と解剖前死後画像の対比を行っていった。当初は実験的な意見書として報告していたが、本年度後半からは二名の放射線科医・法医学者によるダブルチェック体制を整え、正式意見書としての運用を開始した。すでに20例近くの実績となった。今後も日常業務においての実績を重ね、大規模災害時の応用を視野にいれた研究を継続・普及させてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた海外施設視察は、引き続きコロナパンデミックにより延期をよぎなくされているが、発想を転換したことが幸いした。非災害時の法医学における画像による個人識別を導入し、実績を積むことができ、個人識別を主導する県警へのアナウンスも徐々に行うことができた。平時における実施ぬきには、より多くの遺体が一度に発生する大規模災害時の対応は当然ながら困難であり、ある意味で視察よりも重要な研究実施ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
法医学の日常業務において、身元不明遺体の画像による個人識別を継続する一方で、コロナパンデミックの収束を視野にいれて当初計画していた海外施設への視察を行うこと、警察への情報提供のあり方(画像の有用性をより理解してもらえるような方法を探ること)を発展させることの二本の柱をたてて、研究を遂行してゆく。
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Causes of Carryover |
昨年度に続き、当初計画していた海外視察ができなかったため経費使用がほぼゼロとなった。この分の繰りこしとして来年度には海外視察分の経費、および日常業務における個人識別の有用性の警察への普及を試みるための、解剖前CT室に画像をうつす大型モニターの導入などを行ってゆく。
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