2021 Fiscal Year Research-status Report

有害化学物質の曝露指標としてのmicroRNA

Research Project

Project/Area Number	20K21727
Research Institution	Kitasato University
Principal Investigator	大場謙一北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60256477)
Project Period (FY)	2020-07-30 – 2023-03-31
Keywords	エクソソーム / microRNA / カドミウム
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、有害化学物質を扱う労働者の曝露指標として、血液及び尿中のエクソソームに含まれるmicroRNA（miRNA）がその指標として利用可能かどうかを調べるため、その第一歩としてラットにカドミウム（Cd）を経口投与し、そのラットの血液及び尿試料中のエクソソームに含まれるmiRNAを分析した。　ラットのCd長期間曝露実験を行うため、Wistar 系雄ラット（6週令）を1群4匹とし、0、1、2、5mg群の4群に分けて、Cd溶液（CdCl2）をそれぞれ0、1、2、5mg Cd/kg、5週間経口投与した。このCd曝露されたラットから血液、尿、肝臓、腎臓の試料を得た。血液、尿、肝臓及び腎臓中のCd濃度は、原子吸光光度計で測定し、Cd投与量に応じて増加していた。血液及び尿試料中のmiRNAは、各試料の精製したエクソソームから抽出した。抽出したmiRNAは、キットを用いてcDNA合成した。Cdによって増加、または減少するmiRNAのプロファイリングは、5mg群と対象として0mg群のcDNAを鋳型とし、miRNAを増幅するためのプライマーを用いてreal-time PCR法を行い、Cdによって増加、または減少するmiRNAを検出した。血液及び尿試料のエクソソームでは、それぞれ222、201種類のmiRNAが検出され、そのうちCdによって増加したmiRNAはそれぞれ75、46種、減少したmiRNAはそれぞれ53、62種であった。各試料中のエクソソームに含まれるこれらのmiRNAは、Cdにより誘導、または抑制されると考えられた。さらに、Cdによって誘導、または抑制されたmiRNAはCd投与量に応じた変化が認められるかどうかについて解析中である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason ラットのCd長期間曝露実験は、Wistar 系雄ラット（6週令）を1群4匹とし、0、1、2、5mg群の4群に分けて、Cd溶液（CdCl2）をそれぞれ0、1、2、5mg Cd/kg、5週間経口投与した。採尿は解剖前日に代謝ケージに入れ、24時間の尿を採取した。解剖はイソフルランで吸入麻酔後、全採血し、肝臓、腎臓を摘出した。血液、尿、肝臓及び腎臓中のCd濃度は、各試料を灰化後、原子吸光光度計で測定し、各試料中のCd濃度はCd投与量に応じて増加した。血液及び尿試料のエクソソームは、エクソソーム回収試薬（それぞれExoQuick, ExoQuick-TC〔System Biosciences (SBI)社〕）を用いて、回収・精製した。精製したエクソソームは、キット（SeraMir Exosome RNA Amplification Kit〔SBI社〕）を用いて、エクソソームからエクソソームRNAを抽出し、そのRNAをcDNAに合成した。miRNAのプロファイリングは5mg群と0mg群（対象）のcDNAを鋳型とし、ラットの380種類のmiRNAを増幅するためのプライマーで、real-time PCR法を行い、5mg群と0mg群の比較からCdによって増加、または減少するmiRNAを検出した。さらに、これらのCdの影響を受けたmiRNAについて、Cd投与量に応じた変化を調べるために、4つの投与群の試料（cDNA）を用いて、影響を受けたmiRNAを増幅するプライマーでreal-time PCR法を行い、解析した。現在、Cdによって増加または減少したmiRNAについて、それぞれ1種類、Cd投与量に応じた増加または減少するmiRNAを検出することができた。血液及び尿試料のエクソソームに含まれるこれらのmiRNAはCd濃度依存的に変動するため、Cdの曝露指標になることが予想された。
Strategy for Future Research Activity	Cdを曝露したラットの血液及び尿試料から回収・精製したエクソソームを用いたmiRNAプロファイリングの結果から得られたmiRNAについて、Cd投与量に応じた変動の解析が完了していないため、未解析のmiRNAについて解析を進め、各試料中のCd濃度との相関性を示すmiRNAを解析し、Cdの曝露指標として利用可能かどうかを検討する。
Causes of Carryover	本年度に完了することができなかった研究を行うため、次年度使用額が生じました。使用計画は、Cdを曝露したラットの血液及び尿試料のエクソソームを用いたmiRNAプロファイリングの結果から得られたmiRNAは多くあり、これらのmiRNAについてCd投与量に応じた変動をすべて解析するためには十分な時間が必要であるため、次年度に未解析のmiRNAについて解析を進め、各試料中のCd濃度との相関性を示すmiRNAを調べるための費用として利用します。