2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of clot biopsy aiming at development of a simple method for early detection of COPD
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20K21738
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | クロットバイオプシー / COPD / 血餅 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な健康影響調査方法には、簡便で有用な採血を利用する場合が多く、その際、血清或いは血漿が検査に用いられるが、血清を調製した残りの血餅は産業廃棄物となる。血清も量的に限界があり、また液性因子を標的にしかできない弱点があり、加えてサンプルの収集時に様々な制約がかかることも少なくなく、繰り返し患者からの試料収集は簡単ではないのが現状である。そこで、血清調製時に沈殿として捨てられていた血餅(クロット)に着目し、それを有効利用することで、新たな生体情報を得ることができないか、という発想に至った。 血餅は細胞の壊れた粕が含まれており、界面活性剤で溶解させた試料はウエスタンブロット法、およびELISA法によるタンパク質同定・定量に利用できる程度に存在していることを、プレリミ実験で観察していた。成分には色々な酵素反応や生化学的な方法などを阻害する物質などが含まれている。 血餅は、血液そのものよりも液性成分も少なく少量となるため、保管性にも優れている。この特性を利用して、血餅を、冷凍(-70℃ or -20℃)した冷凍血餅として保管したものと、即時調整した試料を比較しても、冷凍による解析に与える影響はなかった。 血餅は塊で、そのままではウエスタンブロット法による血液成分由来の評価は行えないため、血餅溶解液(細かい成分は現在非公開)と混合し、血餅に含まれている血液由来成分を抽出して解析に用いた。血餅溶解液としては、例えば、非イオン性界面活性剤、および/または、アニオン性界面活性剤を含むものを用いることができた。これらの条件検討で最適な調製法を確立し、ウエスタンブロット法でタンパク質の解析を行ったところ、ハウスキーピングタンパク、ミトコンドリア由来タンパク、エクソソーム由来タンパクなどが鮮明に観察することができた。このことから、クロットバイオプシー法の有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
条件検討など、予想以上に候補に掲げた試薬や、種々の使用条件などが、トラブルシューティングなく行えたため、計画以上に進展したと考えている。 現在、この研究課題のクロットバイオプシー方法部分を用いて、特願2021-041239で特許申請することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
クロットバイオプシーの方法はほぼ確立できたので、今後は実験動物を用いた実際の炎症モデルで評価する方針である。マウスに肺炎症を誘導した炎症モデルマウスを構築し、分子生物学的評価と合わせて解析を進める計画である。最終的なモデルはタバコなどに曝露された際におこる慢性閉塞性肺疾患(COPD)を想定している。先ずは、我々の研究室で確立しており、ルーティンで行っている粒子状物質などの気管内投与システムを応用し、炎症を惹起させ、開発した手法の有用性を評価する。投与後、6、24、48時間後にマウスから採血し、解析を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度はコロナ禍の影響もあり、学会参加は軒並みキャンセルが続いた。また、示達前に準備した試料をつかうことでもできたため。令和3年度はこれらの成果発表も盛んに行う予定で、さらには多くのタンパク質に対する利用可否を行うための抗体アレイなどを計画している。
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