2020 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞を起点にした癌細胞微小環境ネットワークの探索
Project/Area Number |
20K21743
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大和田 祐二 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20292211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 啓史 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90803867)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 長鎖脂肪酸 / 白色脂肪細胞 / メラノーマ / グリオーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の脂質微小環境が、細胞増殖に与える影響とそのメカニズムを明らかにするため、各種長脂肪酸がグリオーマおよびメラノーマに及ぼす影響について検証した結果、ステアリン酸やアラキドン酸、ドコサヘキサエン酸などに比べて、オレイン酸(OA)に非常に強い増殖誘導効果があることが明らかになった。そこで、そのメカニズムを検証するため、オレイン酸に強い結合能を有する脂肪酸結合タンパク質(FABP7)の関与について解析を行った。FABP7を腫瘍細胞に過剰に発現させると、グリオーマおよびメラノーマ細胞の増殖が増加した。OAを添加すると、FABP7を発現させた細胞では増殖が促進されたが、コントロールの細胞では促進されなかった。興味深いことに、FABP7の脂質結合ドメインに変異があると、この効果が減弱することがわかった。また、OAを投与すると、OAに結合したFABP7の核内への移行がみられ、様々な標的遺伝子のヒストンH3K27のアセチル化が促進された。さらにOA-FABP7によって誘導される遺伝子群を、DNAマイクロアレイ解析により検討すると、複数の増殖関連遺伝子の発現レベルが上昇していた。 上記に平行して、高脂肪食により肥満を誘導したマウスに対して、白色脂肪組織の脂質分析と担癌モデルの構築および、白色脂肪細胞の分離と癌とのハイブリッド培養系の構築を進めている。ハイブリッド培養系では、腫瘍細胞内のエネルギー代謝や脂質滴形成が、白色脂肪細胞からどのような影響を受けるのかについて検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の結果から、癌細胞においてOAがFABP7との細胞内相互作用を介して増殖関連遺伝子の発現をエピジェネティックに制御し、それによって腫瘍細胞の増殖を促す可能性が明らかになった。また白色脂肪のみならず、他の腫瘍周囲の免疫系細胞が、その脂質環境変化により腫瘍免疫活性を大きく変化させることが分かってきた。この結果は当初予期していない結果であるが、今後平行して解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
白色脂肪細胞と腫瘍細胞のハイブリッド培養系の構築については、純度や生存率などの課題がまだ解決されていないため、分離手法の改良を進めている。また各種脂肪酸調整食を給餌させたマウスモデルの構築が、動物センター改修工事などの影響もあって、若干遅れているが、培養系の実験からOAの強い関与が示唆されたことから、OA調整食に焦点を当てて今後の検討を加えていく予定である。
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Causes of Carryover |
R2年度は、東北大学の動物飼育施設改修工事により、飼育スペースの削減を余儀なくされたため、飼育料が当初の見込みより少なくなった。またコロナ感染拡大の影響により学会がオンライン開催になったため、当初計上していた旅費が執行されなかった。
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[Journal Article] Ligand bound fatty acid binding protein 7 (FABP7) drives melanoma cell proliferation via modulation of Wnt/β-catenin signaling.2021
Author(s)
Umaru BA, Kagawa Y, Shil SK, Arakawa N, Pan Y, Miyazaki H, Kobayashi S, Yan S, Cheng A, Wang Y, Shinoda Y, Kiniwa Y, Okuyama R, Fukunaga K, Owada Y.
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Journal Title
Pharm Res
Volume: 38
Pages: 479-490
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] FABP7 regulates acetyl-CoA metabolism through the interaction with ACLY in the nucleus of astrocytes.2020
Author(s)
Kagawa Y, Umaru BA, Shima H, Ito R, Zama R, Islam A, Kanno S, Yasui A, Sato S, Jozaki K, Shil SK, Miyazaki H, Kobayashi S, Yamamoto Y, Kogo H, Shimamoto-Mitsuyama C, Sugawara A, Sugino N, Kanamori M, Tominaga T, Yoshikawa T, Fukunaga K, Igarashi K, Owada Y.
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Journal Title
Mol Neurobiol
Volume: 57
Pages: 4891-4910
DOI
Peer Reviewed
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