2020 Fiscal Year Research-status Report
世界に先駆けた代謝異常に起因するサルコペニア動物モデルの樹立とヒトによる検証
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20K21750
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
望月 和樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80423838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 隆 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (10377492)
田中 佑治 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任准教授 (40625513)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | サルコペニア / BRD4 / 中鎖脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.代謝異常からサルコペニアを呈するモデルの検証 13-46週齢のC57BL/6J雄マウスおよびBrd4ヘテロ欠損マウスを、通常食であるMFで約100週齢まで飼育して剖検を行い、各臓器を採取した。その結果、Brd4ヘテロ欠損マウスは、骨格筋重量と握力の顕著な低下および加齢性円背が認められ、老齢期サルコペニアモデルとして有用である可能性が示唆された。 2.中鎖脂肪によるサルコペニア改善効果の検証 54-84週齢の雄老齢Brd4ヘテロ欠損マウスを対照食群、中鎖脂肪食群(用いた中鎖脂肪油 カプリル酸:カプリン酸=75:25、対照食のラードの半分量を中鎖脂肪で置き換え)に分け、約5ヶ月間自由摂食させた。試験食摂取開始から約5ヶ月後に血漿および各組織を採取した。その結果、Brd4ヘテロ欠損マウスへの中鎖脂肪の投与によって、副睾丸周囲脂肪の低下傾向が観察されたが、体重低下は観察されなかった。中鎖脂肪食群において解糖系の副路であるペントースリン酸経路阻害関連遺伝子Cndp2、クエン酸回路促進関連遺伝子Pcx、脂肪滴分解に関与するPlin3、活性酸素種除去関連遺伝子Gpx2-ps1などの遺伝子の発現増大が確認された。腓腹筋において筋サテライト細胞からの筋再生に関与するMyh3の発現増大も確認された。ヒラメ筋では、筋構成タンパク質をユビキチン化することにより筋萎縮を誘導するAtrogin1およびMurf1の発現低下やタンパク合成関連遺伝子(Rpl32、Rps21など)の発現増大が見られた。以上のことから、老齢Brd4ヘテロ欠損マウスへの中鎖脂肪の投与によって、骨格筋の代謝と筋サテライト系からの筋再生経路の活性化、ヒラメ筋において筋合成の活性化、筋分解が抑制される可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物モデルの献上が順調にできている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.代謝異常からサルコペニアを呈するモデル(Brd4ヘテロ欠損マウス)の検証 昨年度は、Brd4ヘテロ欠損マウスでは、体重、骨格筋重量、握力等がWild typeマウスにおいて低いことを明らかにした。本年度は、高齢期に見られる骨格筋の構造異常(線維化、異常構造物、筋萎縮)等が観察されるかについて検証する。 2.中鎖脂肪によるサルコペニア改善効果の検証 昨年度は、Brd4ヘテロ欠損マウスに中鎖脂肪食 (用いた中鎖脂肪油 カプリル酸:カプリン酸=75:25)を投与すると、腓腹筋において筋サテライト系からの筋再生経路の活性化、ヒラメ筋において筋合成の活性化、筋分解が抑制される可能性が示唆された。しかし、中鎖脂肪の投与が筋力を改善させるか、また、骨格筋の構造異常を抑制しうるかは未だ明らかではない。さらに、昨年度に用いたMCT油は、カプリル酸:カプリン酸=75:25である。近年、カプリン酸がより代謝異常を是正しうることが報告されている。そこで本年度は、Wild typeマウス、Brd4ヘテロ欠損マウスにカプリン酸が多いMCT油(カプリル酸:カプリン酸=75:25)を投与し、中鎖脂肪に対する筋力回復、構造異常回復、そのメカニズムについて検証する。 3.サルコペニアマウスを用いたバイオマーカーの探索 上記のBrd4ヘテロ欠損サルコペニアモデルを用いて、サルコペニアバイオマーカーの探索する。具体的には、炎症性サイトカイン(IL1β、TNFα、MCP1等)、筋再生マイオカイン(Myostatin、IL6、IL15, IL18等 )の血中タンパク質濃度、末梢血白血球における炎症遺伝子のエピゲノム(DNAメチル化、ヒストンアセチル化、BRD4)を測定する。さらに、人において、そのサイトカインの血中レベルと低栄養関連指標との関連を検証する。
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Causes of Carryover |
動物実験が順調に進行し、飼育期間等が短縮されたため。
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