2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K21762
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉澤 達也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (40313530)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 骨組織 / ホルモン / 臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、エピゲノム因子であるSIRT7の解析から、これまでに報告された骨ホルモンでは説明できない分子機構により、骨組織が糖代謝・腫瘍・腸管免疫を調節している可能性を見出した(未発表)。そこで本研究では、骨芽細胞特異的Sirt7 欠損(KO)マウスを足がかりに、骨組織による新たな生体機能調節の発見、およびその分子機構の解明を目指している。令和2年度は以下の研究を実施した。 1)2年齢のコントロールマウスと骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウスを解析したところ、コントロールマウス30匹では肝臓の腫瘍が5匹、脾臓の腫瘍が4匹見つかったが、骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウス29匹では肝臓の腫瘍が1匹、脾臓の腫瘍が1匹しか見つからなかった。 2)DEN (Diethylnitrosamine) 化学発がん剤による肝臓がん発症モデルを解析したところ、骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウスではコントロールマウスに比較して、有意に肝臓がんの数と大きさが抑制されていた。 3)6ヶ月齢の骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウスとコントロールマウスの骨組織を用いて、網羅的遺伝子発現解析RNA-Seqを行なった。その結果、若齢の骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウスで見られた骨形成関連遺伝子群の発現低下は、コントロールマウスの骨量減少に伴い、その差が縮まっていた。一方、新たにいくつかの分泌タンパク質の発現に差が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画よりやや遅れている理由として、当大学マウス施設の一年近くに渡る大規模改修のため、飼育できるマウスの数が1/3に減らされたことにより、新たなマウスの繁殖ができなかったことによる。現在、改修工事は完了し、徐々にマウスの繁殖を再拡大している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)骨組織による新たな糖代謝調節機構の解明:トレーサー実験により各臓器の糖取り込み量を測定し、責任臓器を決定する。その後、責任臓器のトランスクリプトーム解析や培養細胞を用いた詳細な解析を行う。 2)骨組織による新たな腫瘍調節機構の解明:骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウスに腫瘍細胞を移植し、がんの成長について解析する。RNA-Seqの結果から候補遺伝子を探り、腫瘍に対する効果を検討する。 3)骨組織による新たな腸管免疫調節機構の解明:腸管のトランスクリプトーム解析、FACS解析、メタボローム解析を行う。
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Causes of Carryover |
当大学マウス施設の一年近くに渡る大規模改修のため、飼育できるマウスの数が1/3に減らされ、新たなマウスの繁殖ができなかった。そのため、計画した実験がほとんどできず、次年度使用額が生じた。 現在、改修工事は完了し、マウスの繁殖を始めており、今後は大規模な繁殖を計画している。そのため、翌年度分として請求した助成金の大部分は、動物実験費にあてられる。
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