2021 Fiscal Year Research-status Report
骨代謝異常に対して新たな運動効果を引出す低酸素刺激感受性神経の役割
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20K21764
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
田巻 弘之 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (40253926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻田 太 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (50224134) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 骨 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
低圧低酸素環境下での水中運動トレーニングが糖尿病モデルラットの骨量及び骨梁微細構造の維持に有効であることから、血糖値の経時的変化について分析した。水中運動群に比べ低圧低酸素環境+水中運動群では、血糖値が介入1-2週目で有意に低下した。骨組織に機械的刺激を与える骨格筋(ヒラメ筋)の湿重量に関しては、介入2週目まで両群に有意な差はなかった。また神経系の関与について低酸素刺激感受性が報告されている感覚神経の影響について検証した。若齢期ラットを対象に低酸素刺激感受性神経の阻害剤を用いて薬理的阻害を行い、脛骨を採取し、3次元マイクロCT装置で撮影し、骨梁構造を立体構築した。3次元構造解析ソフトにて脛骨近位幹端の骨量(BV/TB,%)、骨梁幅(Tb.Th)、骨梁数(Tb.N)、骨梁間距離(Tb.Sp)、SMI、骨梁連結密度等の骨量微細構造への影響を調べた。また、骨のひずみ特性を調べるために、採取した脛骨に超小型箔ひずみゲージを特殊ボンドで貼付し、骨への荷重によって生じる骨ひずみ(マイクロストレイン)を計測した。小型床反力計上で荷重強度を同時に計測して、骨ひずみ、骨ひずみ速度(micro strain/sec)との関係を検証した。骨荷重強度と骨ひずみとは比例関係にあることが理解された。また骨ひずみ速度は荷重時と荷重リリース時で逆向き(プラス方向、マイナス方向)の2フェーズが存在した。低圧低酸素環境下での水中運動介入が糖尿病モデルラットの筋重量には影響がないが、糖代謝を改善する可能性があり、骨量及び骨梁微細構造の改善に機能する可能性も考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度の進捗状況として、研究分担者の死去により一部研究スケジュールが変更となり、翌年度に実施する予定となった。低酸素刺激感受性神経の骨量、骨梁構造に対する影響について、分析を進めている。これまでに実施した糖尿病モデルラットの低圧低酸素環境下での水中運動介入実験のデータ分析を継続しており、血糖値の経時的変化との関連性を検討できた。また骨組織の評価として、骨量、骨微細構造、骨強度、骨組織細胞観察に加えて、骨ひずみ特性を加えることで運動や筋収縮によるメカニカルストレスによる骨量改善効果の得やすさを評価することができる。本年度の研究実施により、糖代謝異常改善の観点からも低強度運動介入時の外的環境の在り方を検討でき、基礎的なデータを得ることができ、翌年度の研究計画を実施する基盤が整備された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して低酸素環境において低強度/ローインパクトの運動でも骨量改善効果を発現する機序の一端について検証していく。低酸素感受性イオンチャネルを有する神経の選択的薬理的阻害について一部次年度に実施、分析評価することとなったが、骨量や骨梁微細構造(皮質骨幅、骨梁幅、骨梁連結密度、骨梁間距離等)の分析評価、骨ひずみや骨破断強度、stiffness、elastic modulus等の力学的特性の分析評価などを実施してその影響がどのパラメータに現れるのかを調べ、低酸素感受性イオンチャネルを有する神経の骨組織における役割について検証する予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者の死去により実験実施スケジュールを一部見直し、翌年度に実施することとなった。また研究成果の公表については、学会(国内・国際)はオンライン参加となったこと、実験実施や分析の業務を分担するリサーチアシスタントの雇用が不要となり次年度に実施することとなったため、人件費・謝金や消耗品費の使用が抑えられた。以上のことから、旅費、物品費、謝金において使用額が減少したため。 次年度においては、今年度実施できなかった実験を進めるために消耗品費(試薬等)、人件費・謝金等に使用する計画である。また状況にもよるが研究成果の公表のために一部旅費に使用する予定である。さらに研究成果を国際的に公表するため論文投稿料や英文校正費にも使用する計画である。
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