2022 Fiscal Year Annual Research Report
全身性老化予防の新しい臓器:骨細胞の栄養ネットワーク解明
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20K21767
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
辰巳 佐和子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80420545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 頌治 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (70645209)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 骨細胞 / 栄養 / ミネラル |
Outline of Annual Research Achievements |
骨細胞は加齢に伴い減少する細胞である。骨細胞は自身や骨の他の細胞とネットワークを形成し、栄養素の受け渡しや情報伝達を行うと考えられているが、実態 は明らかではない。最終年度では、引き続き(研究1)新生骨細胞による栄養代謝異常・老化進展改善効果の検討と骨細胞ネットワーク破断マウスの栄養・運動療法による効果検討(研究 2)骨細胞ネットワーク破断マウスの栄養代謝異常を明確にした上で、栄養状態の改善、新生骨細胞の産生を促す食餌組成の検討を中心に実施した。 (研究1)の結果より、骨細胞ネットワーク破断により摂食障害、並びにリン代謝異常が生じていたが、新生骨が生じることで摂食行動が回復した。よって骨細胞-脳の臓器連関が示唆された。さらに尿中リン排泄異常を改善することがわかった。また、老化促進因子として考えられるcalciprotein particle(CPP)の上昇が改善された。(研究 2)の結果より新生骨の産生を促す食餌を検討し栄養補給をしたが、消化吸収能が低下していたため栄養状態の改善にはつながらなかった。原因として腸管では腸内細菌叢の分布も変化が関与する可能性が示唆された。 骨細胞ネットワークの破断は、糖、ミネラル、脂質代謝異常を生じ、老化に伴いリスクが高まる骨粗鬆症、慢性腎臓病、筋萎縮、痩せを加速させることがわかった。研究期間全体を通じて実施した成果として、骨細胞数の減少による骨細胞ネットワークの破綻は、全身性の栄養代謝障害を介して老化にともなう疾患を生じさせることが明らかとなり、骨細胞が栄養センサーの役割担う可能性が高いと考えられた。そしてこのような栄養代謝異常は、新生骨細胞が生じネットワーク形成が整うことで改善することが明らかとなった。今後、骨細胞数を減らすことのない運動と栄養介入方法をさらに検討することは、高齢者の低栄養状態の改善、老化抑止につながると考えられる。
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