2020 Fiscal Year Research-status Report
不活動由来に増加してインスリン抵抗性を惹起する筋細胞内メッセンジャーの探索
Project/Area Number |
20K21776
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
川中 健太郎 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (80339960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
河本 絵美 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (40634514)
上原 吉就 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
畑本 陽一 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 栄養・代謝研究部, 研究員 (90738832)
木戸 康平 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (50822730)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 不活動 / 骨格筋 / インスリン抵抗性 / メタボロミクス / immobilization |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、不活動由来に筋細胞内代謝物質の変化が生じて、これをトリガーとしてインスリン抵抗性が引き起こされるとの仮説を有している。そこで、ラットの不活動筋における代謝物質の変化を網羅的に解析した(シー・スコープ解析)。 3週齢のラットをコントロール群と固定群に分けた。コントロール群は覚醒状態で通常飼育した。テーピング固定群は吸入麻酔下で下肢にテーピング固定を施して、6時間に亘ってヒラメ筋を受動的短縮状態に保った。同一個体の片側の筋は糖取り込み測定に供した。反対側の筋はCE-TOFMS及びCE-QqQMSのカチオンモード、アニオンモードによる測定に供し、解糖系、ペントースリン酸経路、クエン酸回路、尿素回路、ポリアミン・クレアチン代謝経路、プリン代謝経路、グルタチオン代謝経路、ニコチンアミド代謝経路、コリン代謝経路及び各種アミノ酸代謝経路にて主要な役割を占める116種類の代謝物質を選出して解析を行った(シー・スコープ解析)。 固定群のヒラメ筋では、コントロール群に比べてインスリン刺激による糖取り込みが50%以下に減少した。これは不活動に由来してインスリン抵抗性が生じたことを示す。また、116種類の代謝物質のうち36種類が短縮固定筋でコントロール筋に比べて有意な変化を示した(21種類が増加、15種類が減少)。このうち15種類の代謝物質については2倍以上の顕著な変化がみられた。特に、解糖系の減少(グルコース6リン酸、グルコース1リン酸、フルクトース6リン酸、ピルビン酸、乳酸)、TCA回路の増加(オキソグルタル酸)や減少(フマル酸、リンゴ酸、アコ二ット酸)、脂質代謝経路の増加(カルニチン)、コリン代謝経路の減少(コリン、サルコシン)、アミノ酸の増加(グルタミン酸)や減少(アラニン、アスパラギン酸)が特徴的であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
筋内代謝物質の不活動による変化に関する網羅解析を実施することができたものの、コロナ禍により一部の予定されていた実験を実施することができなかった。そのために、やや遅れているとの評価を下している。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット下肢にテーピング固定を施す際にヒラメ筋を伸展状態に保つことで、インスリン抵抗性を防止できる。つまり、不活動筋を受動的にストレッチするだけでインスリン抵抗性を防止できる。ストレッチによる筋内代謝物質の変化を網羅解析することで、インスリン抵抗性を引き起こす代謝物質の候補に絞り込みをかける。さらに、絞り込まれた代謝物質の変化がインスリン抵抗性を惹起する可能性について、摘出筋を用いて検討する。
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Causes of Carryover |
研究責任者の所属する福岡大学においてコロナ感染拡大防止の観点から実験施設を使用できない期間があったため、予定していた実験の一部を次年度に延期した。そのため物品費ならびに解析委託費が余ったために次年度使用額が生じた。次年度はメタボローム解析ならびにインスリン抵抗性の候補物質を特定するための摘出筋を用いたex vivo実験に助成金を使用する。
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