2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of technology for scientific simulations only using integer arithmetic for next-generation computers
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20K21782
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩下 武史 北海道大学, 情報基盤センター, 教授 (30324685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深谷 猛 北海道大学, 情報基盤センター, 助教 (30633846)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 高性能計算 / 計算科学 / 線形反復法 / 整数演算 / 反復改良法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には,本研究の主題である整数演算のみを使用した線形ソルバの研究開発を実施した.本研究では,一般の疎行列を対象とした線形反復法ソルバであるGMRES法を対象として,本手法にIterative refinementの技術を適用することで,GMRES法の主反復内では整数演算しか用いないソルバの開発に成功した.本成果には以下の技術開発が含まれる.①線形反復法で必要となる内積演算,行列ベクトル積,およびこれらの基礎となる四則演算,平方開平において,オーバーフローを避けつつ,できるだけ計算精度を高く保つ整数演算命令のみによる固定小数点演算方式を提案した.②GMRES法の解法およびその一般的な実装手法に含まれるアーノルディ過程やギブンス回転の操作において,一部のベクトルのノルムや変数の値が相対的に小さいことを利用したオペランドの調整法を考案した.本手法では,予め絶対値が小さいと判明している変数については,演算におけるオーバーフローを避けるためのスケーリング操作を適用せず,高精度の値を保持する.次に,開発したソルバを行列データベースから取得した行列を用いた数値実験により検証した.その結果,多くの行列でほとんど計算量を増加させることなく,倍精度浮動小数点数演算に基づくGMRESソルバと同等の収束特性が得られることが明らかとなった.本成果を国際会議において発表したところ,大きな反響があり,仏・ソルボンヌ大学からの招待講演依頼を受け,セミナー発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,整数演算に基づく線形反復法ソルバと反復型ステンシル計算に関する研究開発を進める予定としている.このうち,まず最初の2年間で線形反復法ソルバに関する開発とその性能評価を実施する予定であったが,本課題の採択前に研究をスタートさせた結果,すでに2020年度においてソルバの開発に成功し,また,数値実験によりその有用性が確認された.これらの結果を受け,国際会議発表を行ったところ,国際的に大きな注目が得られ,フランス,ソルボンヌ大学が主導するプロジェクトから招待講演の依頼を受けた.このように,当初の想定を上回る成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り,2020年度において,線形反復法ソルバに関する研究について,想定以上の進捗が得られたため,反復型ステンシル計算における整数演算導入について検討を開始する.また,整数演算と浮動小数点演算の双方を活用する考え方を拡張し,一般の混合精度演算に基づく線形反復法ソルバについてもあわせて検討を行う.
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Causes of Carryover |
本研究課題では,課題代表者,分担者,研究協力者(学生)の3名で国際会議に参加する予定であったが,予定していた国際会議がオンライン開催となったため,次年度使用額となった.2021年度では,スーパーコンピュータ使用料,国際・国内会議旅費,会議参加費,物品費(成果発表用機材)として使用したいと考えている.
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Research Products
(3 results)