2022 Fiscal Year Research-status Report
無限次元最適化とその近似による新しい計算科学の探究
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20K21786
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 宇泰 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90293670)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 数値解析 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画研究は,不確かなモデルのからむ計算科学的研究において,従前は有限次元空間におけるモデル推定(データ同化)を考えていたところ,むしろ無限次元空間におけるモデル推定(すなわち無限次元空間における最適化に基づくモデル同定)だと考えることで,より柔軟で素直な計算科学体系が表出する可能性を探究するものである. 昨年度までに,最適化手法と数値解析学の関係についての調査・検討を行った結果,特に最適化手法におけるステップ幅と数値解析学における線形安定性解析の関係について統一的な理解を得た.この理解に基づき,例えばL平滑な凸関数に対する最急降下法の収束十分条件が,数値解析学における陽的Euler法の安定性条件から簡単に導けることを指摘し,さらにこの視点から,数値解析学的に自然に期待される,硬安定な数値解法がより効率的な最適化手法を導きうることを実際の数値実験を含めて実証した.L平滑の定数が大域的に非常に大きな目的関数に対しては,この種の数値解析学的に自然な算法の方が遙かに効率が良いことを確認した. 今年度は,前年度までに発見していた硬安定な数値解法から得られる最適化手法について,従来の直線探索に替わる「曲線探索」手法を導入し,それにより効率の良い解法が得られることを確認した.これにより,無限次元系である偏微分方程式由来の最適化問題が効率よく解けることを数値的に確認した.また,これまで個別論的に行われていた最適化手法収束性解析が,数値解析学ではよく知られている「離散勾配」を拡張した「弱離散勾配」の概念により,統一的に記述できることを発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに引き続き,最適化と数値解析学の関係について理解を深め,無限次元最適化でも有用と思われる新しい手法・枠組を順調に構築できているため,概ね順調であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はコロナ禍で研究期間の延長を申請している. それを除けば本年度が研究期間の最終年度にあたり,無限次元最適化問題が効率よく解けるかの調査は,一定程度肯定的に確認されたと言える. 今後は,繰越期間において,新型コロナウィルス影響下で開催できなかった国際ワークショップの開催を行い,それを踏まえて引き続き無限次元最適化問題の具体例の検討を行う.
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Causes of Carryover |
本研究課題は,本来今年度が最終年度であり研究は一定程度順調に進展していたが,最終年度に国際ワークショップを開催し成果報告,および関係研究者と議論しさらに内容を高める活動を行う予定であったところ,新型コロナウィルスの影響でワークショップ開催が難しく,繰り越しをせざるを得なかった. 繰越期間においてこれら当初の目標を達成する予定である.
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Research Products
(7 results)