2020 Fiscal Year Research-status Report
シミュレーションと機械学習の協調による予測に基づいた動的負荷分散手法の開発
Project/Area Number |
20K21787
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下川辺 隆史 東京大学, 情報基盤センター, 准教授 (40636049)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ステンシル計算 / 高性能計算 / 機械学習 / 高生産フレームワーク / 適合細分化格子法 / 動的負荷分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
流体計算などの格子に基づく計算では、高精度が必要な領域をより高精細な格子で計算できる適合細分化格子(AMR)法がマルチスケール問題解決の鍵となる技術として注目されている。本研究では、大規模GPUスパコンで従来と比較して極めて高性能なAMR計算を実現するため、機械学習によりシミュレーションの「未来」の結果を予測し、それに基づき計算負荷を動的に分散する手法を開発する。開発手法を課題代表者らが開発中のAMR法フレームワークへ導入し、様々な実アプリケーションへ適用する。本研究では、従来のシミュレーションだけでは不可能であった 「未来」の予測を含めた時系列変化を考慮した負荷分散を実現することを目指す。 本年度においては、ほぼ当初の計画通りに、機械学習で、流体シミュレーションの 「未来」の結果を予測する手法を開発した。均一な格子上の流体計算を対象に、単一の流体においては流速や密度、気体と液体の二つの相が混合する流れにおいては流速や密度に加えて液相率の結果を深層学習を用いることで予測できることを確認した。複数の時間ステップを一つの空間の次元として捉え、Encoder-decoderモデルの深層ニューラルネットワークを構築し、利用した。5つの時間ステップの計算履歴から、その先の時間ステップのデータを予測している。予測には、シミュレーションの全ての時間ステップの結果を用いるのではなく、20ステップに1つのステップを用いて、大幅な高速化を図っており、深層学習による予測手法がシミュレーション実行と並行して利用できることがわかってきた。深層ニューラルネットワークの学習では、複数GPUを用いて高速な学習をする方法の知見が得られた。また、画像のような2次元データの他に、数値計算でよく用いられる3次元データを学習において効率的に取り扱う方法について有益な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画に示した通り、機械学習で、流体シミュレーションの 「未来」の結果を予測する手法を開発した。均一な格子上の流体計算を対象に、単一の流体においては流速や密度、気体と液体の二つの相が混合する流れにおいては流速や密度に加えて液相率の結果を深層学習を用いることで予測することに成功した。時系列データを扱ういくつかの深層ニューラルネットワークモデルを比較検討した結果、複数の時間ステップを一つの空間の次元として捉えてEncoder-decoderモデルの深層ニューラルネットワークを用いることで、5つの時間ステップの計算履歴から、その先の時間ステップのデータを予測できることがわかった。予測には、シミュレーションの全ての時間ステップの結果を用いるのではなく、間引かれた時間ステップを用いている。間引かれた時間ステップからも、十分な精度で「未来」の結果を予測できることが明らかになり、シミュレーション実行中に動的負荷分散のために深層学習による推論結果を利用できると期待される。 研究を進めるにつれ、深層学習では均一な格子上のデータが取り扱いやすいことがわかり、AMR法による局所的に解像度が異なるデータを直接学習するよりも、均一な格子上のデータへ変換したのちに、それを学習する方が有効であることがわかってきた。均一な格子上のデータから、渦、界面、物体表面など、高精細が必要な局所領域の大きさや移動方向を推定する方法の検討を進めている。以上のように、研究課題全体として、計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
流体シミュレーションの 「未来」の結果を深層学習により予測する手法が有効であることがわかったため、令和3年度の前半は、これを基盤として、渦、界面、物体表面など、高精細が必要な局所領域の大きさや移動方向を推定する方法の開発を進める。当初の計画では、AMR法による局所的に解像度が異なるデータを学習することで推定手法を開発する予定であったが、令和2年度に得られた知見から、局所的に解像度が異なるデータを均一な格子上のデータへ変換したのちに、そのデータを学習することで推定手法を開発する予定である。 令和3年度の後半は、当初の計画通り、予測に基づいた動的負荷分散手法の開発を始める。深層学習による高精細な領域の大きさや移動方向の予測に対して、計算量や通信量を評価し、最適な領域分割を決定する。予測と負荷分散の評価はシミュレーション実行中にそれとは別に行うことで、従来より計算コストは高いが、時系列変化を考慮した実行性能を最大化する負荷分散を実現することを目指す。予測に基づいた動的負荷分散手法の開発に並行して、開発手法のAMR法フレームワークへの導入と様々な実アプリケーションへの適用を検討する。流体計算、音響解析、電磁波計算などへの適用を試み、提案手法の有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大のために、参加を予定していた国際会議や国内学会への参加を取りやめたことで、主に旅費およびその他で次年度使用額が生じた。また、研究期間が終了した科研費課題で購入した計算機を本課題でも活用したことで、物品費で次年度使用額が生じた。次年度使用額は、本年度に購入予定であった計算機の購入費用に用いる予定である。また、新型コロナウイルス感染症の状況が改善されれば、来年度の旅費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)