流動表現学の萌芽

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K21796
• Research Institution: Aoyama Gakuin University
• Principal Investigator: 楽 詠コウ 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (30612923)
• Project Period (FY): 2020-07-30 – 2023-03-31
• Keywords: 複雑流体 / 力学モデリング / 光学モデリング

Outline of Annual Research Achievements

本年度は主として，複雑流体の力学特性を動画により推定する方法の研究を進めた．また，光学特性推定のための方法も検討している．
力学特性の推定では，撮影した動画に対して，力学特性を表すパラメータを未知数として，シミュレーション結果を最適化するというアプローチをとる．この最適化結果が真値と同等のオーダーとなる良好な場合もあるが，最適化されたパラメータによるシミュレーション映像と撮影動画とが良い一致を示すにもかかわらず，最適化結果と真値との値に大きな差があるケースも見られた．その原因を解析していくと，パラメータの変動に対してシミュレーション結果(物理的流動性)がほとんど変化しない場合があることが，数値計算からも理論計算からもあることがわかった．これを踏まえて，パラメータの推定結果の確定しやすさに関する理論を構築した．シミュレーションに対するパラメータの感度を定量化し，さらに，実際にシミュレーションを行うことなくその感度を推定する方法を構築した．得られた解析結果から，実験設定を変えることで，パラメータごとの感度を変えることができることがわかった．このことは，この理論を活用した最適な実験設定の提示手法の構築可能性を示唆している．
光学特性の推定では，回転するステージを用意し，光を当てる方向を変えて撮影した結果に基づいて，光学パラメータを推定する．測定用の回転ステージなどを試作してその挙動を継続検討中である．

Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

動画ベースの力学特性推定を行う場合，パラメータを精度よく確定できない場合があることは当初から予想していたが，計画時にはなかったアイデアによって，パラメータの決まりやすさに関する理論を構築できた．

Strategy for Future Research Activity

今後は，まず，動画ベースの力学特性推定手法の検討を継続するとともに，デバイスを活用した光学特性の推定手法の検討も継続する．前者は，パラメータの決まりやすさに関する理論をより精密化し，パラメータ推定に適した実験設定を自動的に提示する方法の構築に活かしたいと考えている．後者は，最適化問題としての定式化を活用し，非均質媒質の物性推定などを検討したい．これらはマクロな視点からの観測に基づく推定手法である．そこで次に，ミクロなモデルケースを構築して解析するアプローチも併用していきたいと考えている．具体的には，混合系における光学特性のモデル化をこの方法で行うことを予定している．これによって，マクロな系の物性混合の関数系を具体的に考察することができる．このように，マクロ・ミクロの両方面から洞察を深めていきたい．

Causes of Carryover

今年度はコロナの影響により，旅費の必要がなくなり，また，当初予定していた人件費・謝金も利用ができなかった．これらの未使用額は，次年度以降の実験用デバイス制作や計算環境の充実に充てる予定である．