2020 Fiscal Year Research-status Report
視覚と体性感覚の統合における身体の見た目の影響の解明とその活用
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20K21801
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳴海 拓志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70614353)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / 多感覚統合 / アバタ / 身体所有感 / 行為主体感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,バーチャルリアリティ(VR)環境で操るアバタの見た目を変化させる実験から,身体の見た目が視覚と体性感覚の統合に与える影響とその機序を明らかにすることである.その上で,VRや遠隔操作において実身体を代替するアバタの見た目を制御して多感覚統合を促進/抑制する手法を確立し,作業支援を図る.多感覚統合における視覚優位を利用した触力覚提示手法から遠隔医療における精密操作実現まで,視覚と体性感覚の統合におけるずれの問題を扱う領野は広い.ずれが意識に上らない閾値が調べられてきた一方,閾値を操作して多感覚統合を促進/抑制する手法は未踏である.そこでアバタの見た目が視覚と体性感覚の統合に与える影響の解明から応用まで狙う挑戦的研究として,アバタの見た目の変化による多感覚統合の閾値の変化とその機序の検証,多感覚統合を促進/抑制するアバタ設計法の確立に取り組む. 本年度は,VRでアバタの見た目を変化させた際の,視覚と体性感覚の多感覚統合の閾値変化を定量化する実験をおこなった.具体的には,VR環境で目標位置まで手を運ぶリーチングタスクをおこなわせる際,実際の手の軌道に補正をかけて左右にずらした軌道をアバタの運動として表示し,階段法により視覚と体性感覚のずれに気付かなくなる閾値を求めた.アバタの見た目には,人らしい見かけの手(抽象度低)と球状のポインタ(抽象度高)を使用した.その結果,体の中心軸に近づく方向のずれに関しては身体の見た目による閾値への影響が見られなかったものの,体の中心軸から遠ざかる方向のずれに関しては身体の見た目がリアルなほど閾値が大きくなり,ずれに気付きにくいことが示された.なお,方向による結果の差違はペリパーソナルスペースや身体構造等の影響による可能性がある.この結果を論文化し,身体の見かけの抽象度が視覚と体性感覚の多感覚統合に影響することを初めて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通り進んでいるため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,身体の見かけの抽象度が視覚と体性感覚の多感覚統合に影響することを報告することができた.引き続き身体の見え(手のみ,手と腕,全身等)やレンダリング手法(写実,アニメ調,白黒等)の影響等についても調査した上で,多感覚統合を促進/抑制したい場合にどのようなアバタを用いるべきかを体系化し,提案手法による多感覚統合促進/ 抑制の効果を応用領域において評価することを狙う.
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Causes of Carryover |
当初計画では対面でおこなう実験を複数回実施すること,また国際共同研究を遂行すること,そして国際会議で発表すること等を盛り込んでいたが,COVID-19の影響が長期化していることにより,それらの一部の延期を余儀なくされた.そこで初年度はすでに所有しているデバイスを活用して基盤となる技術部分を中心的に開発する計画とし,実施できなかった実験については一部をオンラインで実施できるよう修正を加えた計画を立案することとした.そのため,次年度使用額はオンライン実験の実施に伴って生じるシステム運用にかかる費用と謝金に当てる計画である.
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Research Products
(18 results)