2020 Fiscal Year Research-status Report
Smart olfactory display to generate intended scents
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20K21806
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中本 高道 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20198261)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 自然言語処理 / 香り記述子 / 要素臭 / 質量分析器 / 嗅覚ディスプレイ / 香り提示 / 官能検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
精油に関して、質量分析器データからDNNを介して匂い印象予測を行うモデルを構築した。データベースには匂い印象に当てはまる香り記述子のみが記載されているので、その匂いの印象の記述子の有無のみが記された2値データとなる。この場合、類似した香り記述子が相互排他的に表れるために香り記述子間の相関が消えてしまう問題があった。そこで、類似度の高い匂い印象を表す記述子は自然言語処理(FAST TEXT)を用いて,クラスタリングして香り記述子グループを作成した。FAST TEXTでは英語版ウィキペディアをコーパスとして学習させた。さらに各記述子毎に2クラスの分類を行う際、2クラスのデータ数にアンバランスが生じるが、それをSMOTE (Synthetic Minority Oversampling Technique)で補正した。ここではマススペクトルをオートエンコーダで次元圧縮し隠れ中央層の出力を多層パーセプトロンで構成された分類器で2クラスに分類する方法を採用した。96種類の精油についてマススペクトルを測定し、上述の手法を用いた結果、精油の香りの匂い印象をある程度の精度で予測できることがわかった。 それから、香りを表す要素臭については、185種類の精油を測定し非負値行列因子分解法で20の基底ベクトルを抽出し、各基底ベクトルに相当する要素臭を作成した。 嗅覚ディスプレイの研究では、マイクロディスペンサで射出した香料を弾性表面波デバイスにより霧化して香り提示を行う。気泡の影響を受けずに安定に射出できるように小型の電気浸透流ポンプを組み込み香料をマイクロディスペンサに供給できるようにした。その結果、香り提示の安定性が大きく向上したので、20成分調合嗅覚ディスプレイの各チャネルに電気浸透流ポンプを組みこんだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、質量分析器データから匂い印象を予測する写像を行うところまでできている。2年目にはこの逆推定を行うが、この写像が行えることが前提となる。匂いの印象予測は1年目の到達目標であり、ほぼ目標を達成している。 また、質量分析器から要素臭を作成する研究についても精油をほぼカバーするデータを既に取得し、実際に要素臭作成も行っている。さらにマススペクトル間の類似性を表す指標を検討しKullback-Leibler divergenceよりItakura-Saitoh divergenceの方が官能評価に近い結果が得られることもわかった。要素臭に関しても既に2年目の準備は完了している。 嗅覚ディスプレイに関しては、多成分調合嗅覚ディスプレイが本研究で必要となる。既に20成分まで実時間調合可能な嗅覚ディスプレイは稼働しており嗅覚ディスプレイとして動作することは確認済である。従来の要素臭の研究は液体ベースで気相中で調合して行ってきたが、液体ベースで調合した香りと開発した嗅覚ディスプレイで調合した香りに違いがあるかどうかも官能検査を行い、その違いがないことを確認している。要素臭で近似作成した香りを実際に提示するための準備は終わっており、嗅覚ディスプレイを用いた官能検査もすぐに行う予定である。 このように、所望の香りを提示する嗅覚ディスプレイを実現するための準備段階は終わっており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度作成した質量分析器から香り記述子への写像を用いて、来年度は香り記述子からマススペクトルを推定する逆問題に取り組む。いくつかの既知のマススペクトルと香り記述子の関係を用いて、与えられた香り記述子のグループを表すマススペクトルを逐次探索する最適化問題を解くことになる。その際、特定の香り記述子の度合いを強めたり弱めたりする方法やインタラクティブに香り記述子を増減する方法も検討する。 次に得られたマススペクトルから要素臭へ分解する。要素臭は本年度作成した20種類の要素臭を用いる。非負拘束最小二乗法を基本として、適宜マススペクトル空間上で類似度を測る方法を検討して最適な方法により要素臭調合のレシピを求める。Itakura-Saitoh divergenceがマススペクトル間の類似性を測るのに有効であり、Itakura-Saitoh divergenceを用いた最適化手法で要素臭調合のレシピを求める方法を検討する。 そして、得られた要素臭調合のレシピを多成分嗅覚ディスプレイに入力して嗅覚ディスプレイから香りを生成する。多成分嗅覚ディスプレイはマイクロディスペンサで香料を射出して弾性表面波デバイスで霧化して香り提示を行う方式を採用している。既に20成分調合可能な嗅覚ディスプレイを開発済であるが、本年度その動作安定性を向上させる改良を行った。この嗅覚ディスプレイを実験に用いる。そして、官能評価により意図した香りが再現できているかを調べる。
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Causes of Carryover |
予定した物品費、人件費を他予算で措置できたので次年度使用額との差が生じた。さらにコロナ禍も影響して物品費が少なくなった。次年度は嗅覚ディスプレイで使用する部品、香気物質及び官能検査で必要となる器具等の消耗品を当初計画より多く使用する予定である。従って当初請求した助成金と合わせて本年度中に全額使用する予定である。
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