2021 Fiscal Year Research-status Report
非公理的論理と潜在空間表象に基づく創造的記号処理モデル
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20K21812
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
船越 孝太郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (30839311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 信介 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (90456773)
岩橋 直人 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (90394999)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 創造的推論 / 非公理的項論理 / アブダクション / 議論 / メタファー / アナロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度の理論的研究成果についてさらに検討を深め,理論の基礎を固めた.項表示言語として形式化した独自の構文論の上で,非公理的項論理(Non-Axiomatic Term Logic)として,本研究の着想点である非公理的論理(Non-Axiomatic Logic)を大きく発展させた.非公理的項論理は,項表示言語で定義した3つのクラスの項の間の計算として,5つの可能な形式的推論の型を規定する. ただし,非公理的論理では,数学的考察に基づいて先見的に与えられていた計算可能な意味論がタスク非依存のアルゴリズムとして先験的に与えられていたが,非公理的項論理ではまだその部分が欠けている.非公理的項論理では,意味論部分をタスク依存性のある暗黙知として機械学習によって獲得する想定であり,この点は次年度の中心的研究課題となる. 本年度の具体的な成果として,上記の非公理的項論理の理論を用いて,関連文献で用いられていた議論の例(インターネットのオピニオンサイトから採取された実際の議論が元になっている)に対する分析を示し,非公理的項論理の記述力と説明力を定性的に実証した.理論の内容と議論の定性的分析を論文としてまとめ,人工知能系論文誌に投稿した.現在2回目査読の結果待ちである. 我々は,上記の表示言語と推論形式が,仮説推論, 論証,比喩・アナロジー,発見的問題解決といった人間の様な記号的思考を統一的に記述できる可能性があると考えており,論文ではそれぞれについての見込みを具体例を通じて議論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が探求する創造的記号処理モデルは,記号的知識を表現する明示的構文論と,それにもとづく有用な推論を実現する暗黙的意味論からなる.初年度に先行研究に残る課題の検討を通じて全体の方向性を定め,今年度は構文論において一定の完成をみた.もちろん今後の検討により構文論も理論的改訂を受けることは十分予想されるが,次の段階である暗黙的意味論を機械学習を用いて検討するのに必要な土台は構築できた.意味論部分の実現可能性・有効性を検証するためのアプローチについても,おおよその検討ができている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(三年次)は,意味論まで含めた非公理的項論理の有効性の実証を,データセットを用いて定量的に行う.
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Causes of Carryover |
RA雇用を想定していたが雇用可能な適任者がおらず費用が浮いた.また計算機実験のためのデータ作成・評価を行う見込みを立てていたが,今年度はそれらの作業を要する段階にまで至らなかった. 今年度で計算機実験の効率的な実施に活用する計画である.
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