2021 Fiscal Year Research-status Report
「模様を見ない」模様解析―モデルベース定量化から知る多様性認知バイアス
Project/Area Number |
20K21814
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮澤 清太 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授(常勤) (10377905)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 模様パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の体表模様など、生物に見られるパターンを観察するとき、我々は無意識のうちにそれらを識別し、分類している。パターンの違いは誰の目にも「見ればわかる」ように感じられるため、「他種とまったく異なる模様パターン」が観察された場合には、新種/別種であることを示す強い根拠であると考えられる傾向にあった。しかしながら、こうした直感的な「模様の見方」が妥当であるかどうかについて、これまで明示的な検証がなされているとは言い難い。本研究課題では、「模様を見ない」(=主観・直感に頼らない)、数理モデルに依拠した模様パターン定量化の手法を確立するとともに、模様解析データと系統解析データとを照らし合わせることでパターンモチーフ間に存在する関係性を可視化し、我々の直感的なパターン識別・分類体系に潜む多様性認知バイアスを明らかにすることを目指している。本年度は、昨年度に引き続き、魚類を対象とした体表模様の解析を進めた。直感的な模様パターン分類としてこれまでよく用いられている11のパターンモチーフ(斑点、縞模様、目玉模様等)に着目し、モチーフのバリエーションがどのように遷移し得るのか、系統情報と模様パターンデータとをあわせた比較検証により推定することを試みた。さらに、本研究独自の模様パターン解析や比較ゲノム解析から、有効種として記載されていた複数の魚種について見直しが必要である可能性を初めて指摘するなど、進展が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模様モチーフ間に存在する関係性を可視化し、モチーフのバリエーションがどのように遷移し得るかを明らかにするという取り組みは一定の成功を収めていると言える。模様パターンの定量化については、領域ごとの模様の種類・性質により適用する手法を適宜選択するなど、今後の改良と検討の余地を残しているが、総じておおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
多彩な模様パターンをもちゲノム情報の入手が容易な生物群を対象に系統解析・集団構造解析を行い、模様パターンの多様性がどのようにもたらされるかを明らかにするとともに、個々の模様パターンを構成する模様要素、モチーフのそれぞれについて適した解析手法を検討していく予定である。また、パターンモチーフの判別実験等から、模様の認識に関しても検討を行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
多彩な模様パターンをもちゲノム情報の入手が容易な生物群を対象に系統解析・集団構造解析を行う予定であったが、サンプル入手の遅れ等の理由により一部が未実施となっており次年度使用額が生じている。この未実施分については、翌年度分請求した助成金と合わせ、本年度予定分の解析と次年度予定分の解析を次年度にまとめて実施する計画である。
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Research Products
(4 results)
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[Book] Pigments, Pigment Cells and Pigment Patterns (Hashimoto, H., Goda, M., Futahashi, R., Kelsh, R., Akiyama, T. Eds.)2021